運賃加算された東京の電車特定区間内とホームドア整備の整合はどうか
大都市圏の鉄道では駅ホームでの人身事故の防止、抑止効果の観点からホームドアの整備が進められています。
その中でJR東日本は、2022年4月5日付けニュースリリースで「バリアフリー設備の整備を促進します ~ホームドアは整備を拡大・加速~」を公表しています。
以下、「」部分で引用します。
「今後は、特に早期整備が求められるホームドアについて、東京圏在来線主要路線の線区単位の330 駅 758 番線へ整備拡大することに加え、これまでの計画より1年前倒し 2031 年度末頃までの整備を目指します。」
ホームドアの整備拡大・加速の項目で、
「東京圏在来線主要路線の線区単位の 330 駅 758 番線(主要な番線以外も含む)へ整備拡大することに加え、整備時期を 1 年前倒し 2031 年度末頃までの整備を目指します。」
(以上「」は引用)
バリアフリー設備の整備に伴い、東京の電車特定区間内を対象に、指定の料金を旅客運賃に加算しています。
今回は、JR東日本のホームドア整備に伴う駅の乗降客数を見てみたいと思います。
東京の電車特定区間外でのホームドア整備区間と、区間内での未整備区間は
東京の電車特定区間の概念図の区間と、ホームドア整備対象の概念図の区間とは一部異なっています。
電車特定区間の範囲を越えてホームドアが整備されるのは、以下の区間です。
〇 東海道線:藤沢-平塚
〇 川越線:日進-川越
〇 成田線:空港第2ビル-成田空港
反対に、電車特定区間の範囲でありながら、ホームドアが整備されないのは、以下の区間です。
〇 五日市線全線
〇 鶴見線全線
東海道線、横須賀線のホームドア関係で関心を引くのは、東海道線は大船以西が電車特定区間から除かれていながらも平塚までホームドアが整備されることです。
また、東海道線と対照的に、横須賀線は全区間が電車特定区間でありながら、逗子以東はホームドア整備対象から除かれました。
電車特定区間外でのホームドア整備駅の1日の乗降客数は
ここで、電車特定区間ではないが新たにホームドア整備の駅の、2022年度1日当たりの乗降客数を見てみます。
なお、数字の単位は「人」であり、※は参考情報です。
〇 東海道線:藤沢175,172、辻堂96,568、茅ヶ崎88,528、平塚96,660、(※大船155,340)
〇 川越線:日進22,164、西大宮20,768、指扇17,560、南古谷13,892、川越61,864、(※大宮406,320)
〇 成田線:成田空港2,782
電車特定区間外での乗降客数状況を見る
東海道線藤沢-平塚の乗降人員は多く、15両編成電車の頻発光景も理解できます。
熱海まで15両編成電車が走るほどです。
参考までに平塚-熱海の乗降客数も見てみたいと思います。
大磯12,752、二宮20,640、国府津9,208、鴨宮19,512、小田原52,260、早川2,326、真鶴4,866、湯河原9,034、熱海15,210
こうして見ると、平塚から先、小田原までは次の計画として整備が望まれる区間ではあります。
次に、東海道線以外の電車特定区間外での乗降客数の多い駅を一部、見てみます。
〇 高崎線:上尾67,786、高崎45,880、桶川41,804、宮原38,218、鴻巣31,192、北本29,314、北上尾29,314、籠原22,346
〇 東北線(宇都宮線):久喜55,518、東大宮55,414、宇都宮54,270、蓮田33,126、小山32,718、土呂25,850、白岡20,814
〇 常磐線:水戸48,721、土浦23,440、牛久18,828、荒川沖11,628、ひたち野うしく10,498
〇 外房線:鎌取33,656、本千葉22,328、土気20,480、茂原16,118、大網15,370
〇 内房線:五井30,846、木更津22,700、八幡宿19,492、姉ヶ崎16,104、浜野12,540、君津12,526
〇 総武線:四街道35,952、都賀34,712、佐倉15,710(※成田線:成田25,558)
〇 中央線:甲府20,284、上野原8,030、大月6,758、相模湖3,298、四方津2,278
高崎線と東北線(宇都宮線)もホームドア整備が望まれるところではあります。
高崎線で言えば第一段階として熊谷、第二段階で高崎まの全線です。
東京から熊谷・高崎、小山・宇都宮まで、ホームドア整備で運賃に加算するかどうかは、ひとまず今回の計画にある、2031年度末までの整備後の話です。
整備方針、整備予定の中では、2026年度以降(2035年度まで)と表現されています。
資材導入の事情、JR東日本の経営状況によっても左右されるとみられます。
電車特定区間でもホームドア整備対象外の乗降客数
次に、同上のデータで、電車特定区間でありながらホームドア整備対象でない駅を見てみます。
〇 横須賀線:東逗子8,300、田浦3,876、横須賀8,392、衣笠13,748、久里浜10,470、(※逗子44,574、鎌倉64,648、北鎌倉14,276)
〇 青梅線:牛浜7,092、福生25,862、羽村21,510、小作25,422、河辺21,594、東青梅10,898、青梅9,972、奥多摩1,560。青梅以西は奥多摩以外はデータなし。
〇 五日市線:東秋留7,486、秋川10,700、武蔵引田5,280、武蔵増戸3,978、武蔵五日市6,732。熊川はデータなし。
〇 南武線:浜川崎支線(この項は乗車人員のみのデータ)八丁畷1,707、川崎新町2020年度1,134。(※乗降人員データでは尻手24,656、川崎325,424。浜川崎はデータなし)
〇 鶴見線:データなし(※鶴見は123,666)
このうち、横須賀線は数値的には高くはないものの、グリーン車付き11両編成電車も発着することから、ホームドア整備が望まれるところです。
横須賀線については別途、背景を分析してみたいと思います。
(※記載にあたり、各駅の乗降客数は、統計情報リサーチ「国土数値情報(駅別乗降客数データ)」(国土交通省国土政策局・令和4年度)を参考にさせていただきました。)