813系全82編成246両をロングシート化するJR九州の徹底さ
JR九州から、2023年11月30日付けで「813系電車ロングシート化します 」とのニュースリリースがありました。
その冒頭の説明で、「JR九州の主要な線区を走行する 813 系電車は、お客さまにより快適にご利用いただけるよう車内ロングシート化を実施します。」とあります。
「お客さまにより快適にご利用いただけるよう車内ロングシート化」とは、通常の概念とは反対の、妙な印象を受けます。
「より快適にご利用いただけるよう車内ロングシートを転換クロスシート化」なら理解できますが、その逆だからです。
JR九州813系の場合、転換クロスシートでは立席面積が少なく車内が混雑するので、ロングシート化により立席面積を拡大し、立席客の混雑率を減らすことでの快適性ということです。
813系は3両全82編成の計246両と多く、運行区間も鹿児島線 門司港-荒尾、長崎線鳥栖-江北、日豊線小倉-佐伯、筑豊・篠栗線博多-直方と広範囲になっています。
今回は、JR九州が813系の全車ロングシート改造に踏み切ることに触れたいと思います。
混雑による乗降ドア付近の転換クロスシート撤去への批判対応?
813系は3ドア転換クロスシート車で、ドア間には5列の転換シートを配置しています。
ドア間の転換シート座席数は、片側あたりで10席(5列×2席)でした。
一部編成ではドア付近の混雑緩和のため、ドア間の5列の転換シートのドア寄りの両端を撤去し、3列化しました。
片側あたりの10席(5列×2席)が6席(3列×2席)になりました。
1車両当たりで見ると、ドア間の5列が計4組構成する転換シートが、各組2列撤去により、計16席減(8列×2席)となりました。
1編成3両合計では48席減です。
単に座席撤去しただけの措置だったので、ドア付近の混雑は緩和できたものの、着席の機会は減りました。
通常の概念としては、撤去部分にロングシートを充てるかと思いますが、JR九州は単に転換シート撤去だけとしました。
その後、着席の機会が減ったことへの苦情、増結、増発等がJR九州に寄せられていると思われます。
増結、増発は現在のJR九州ではままならず、従来通りの座席定員を維持しつつも、車内混雑緩和と両立させるにはロングシート化との結論に至ったと考えられます。
列車に乗った際、座席撤去によりやたらに広い立席面積の中で、従来の半分の転換シートが残る車内よりは、ロングシート化して座席数を増やした方がよいとは思います。
改造後の座席定員としては当初の、ドア間転換シート5列分と、ロングシート化による座席数とは同じ10人ですが、ロングシート化により立席面積は転換シート車よりは拡大します。
通路部分を見れば、転換シート車と比べロングシート車の立席面積は倍以上あり、そこで立席客の混雑緩和を図るものです。
連結部の4人掛けボックスは存続
ニュースリリースでの座席内訳として、ロングシート座席120席、ボックス席28席と明記されています。
3ドア車のドア相互間は10人掛けロングシート、車端は4人掛けボックスシート、片側先頭車1両だけ列車トイレ設置で数値は一致します。
連結部の4人掛けボックス席は存続され、3両で28席と案内されています。
JR九州は何事も徹底するのが特徴ゆえ、車端部を含めて完全ロングシートになるかと想定しましたが、車端部にボックスシートを残したことはよかったと思います。
10人掛けロングシート中間にスタンションポールを
座席の写真・図柄を見ると、10人掛けロングシートでは座席中間にスタンションポールを設置しない、長い座席だけの図柄になっています。
利用が多い、混雑が激しいゆえのロングシート化ならば817系・821系のように、3&4&3で区切った2本のポールを設置した方が効果的ではないでしょうか。
この中間席位置のポールは、着席定員を守ることと、体が不自由な人の支え等に役立つ実用的なものです。
10人席のポールの数は、5&5区切りの仕切り1本では効果が薄く、3&2&3&2区切りの3本では多すぎて鬱陶しくもなります。
817系・821系同様、3&4&3区切りの2本のスタンションポールが適当と考えます。
座席デザインはJR九州特有の個性的なタイプでなく、ごく一般的な通常タイプとなっています。
813系全82編成246両改造という思い切った内容ゆえに、座席に凝る、こだわる余裕まではなかったようにも思われます。
2023年12月1日付け、拙「227系で広がるJR西日本普通列車移動の優越感」でも書かせていただきましたが、JR東海の315系、JR東日本の横須賀線・総武快速線のE235系、JR北海道の737系などの最新型車両と同様、JR九州もロングシートの傾向、方向性が感じられます。
先般の811系に続く今回の813系のロングシート化は、JR九州の車両増備、増結、増発が困難な中での苦渋の選択と理解しますが仮に、普通列車に転換クロスシートはサービス過剰という思想があるとすれば遺憾です。
ロングシートであっても、座席の居住性の配慮はしてほしいと思います。
今回の813系については、車端部ボックスシート存置がJR九州の配慮と受け止めました。
JR九州の普通列車が今後、転換クロスシート、4人掛けボックスシートの電車、気動車も813系と同じ流れになっていくのか、走行区間の地域性、利用状況により柔軟に対応していくのか、注視していきたいと思います。
※写真は本文と無関係です。