京浜東北線、南武線、横浜線と同じ10時台~15時台の日中5時間快速の意義と共通性を見る
京葉線快速削減について、連続して拙ブログで触れさせていただいています。
以前にも記しましたが、JR東日本千葉支社が2023年12月22日の定例記者会見において、2024年春のダイヤ改正における京葉線の快速削減の主な目的として、(1)混雑のばらつきを標準化、(2)快速通過駅の乗車チャンス拡大、(3)各駅停車の所要時間短縮。
以上の3点を挙げていました。
日中以外の快速運行廃止によって上記3点を実現したい趣旨と受け止めます。
今回は、記者会見で触れられなかった、日中に残る快速の存続理由について考えてみたいと思います。
先ほどの3点を、快速と各駅停車(以下、「各停」)に置き換えてみると、以下のようになろうかと考えます。
(1)混雑のばらつきを標準化
→ 快速の混雑と各停の乗車率の低さを各停のみにすることでの平準化。
同様に、上り通勤快速の乗車率の低さと前後の各停の混雑の、通勤快速の各停化による平均化。
(2)快速通過駅の乗車チャンス拡大
→ 快速の各停化による快速通過駅での乗車機会の拡大。
(3)各駅停車の所要時間短縮
→ 快速の各停化による最大7分、平均2分短縮が図れるとの主旨。
ダイヤ改正目的の3点は、終日でなく10時台から15時台を除いての話?
前記3点はいずれも、平日朝夕・夜の通勤時間帯を主体とする話と考えられます。
10時台から15時台の5時間の間、快速は設定を継続するからであり、この時間帯においては当てはまらないからです。
終日にわたって快速を設定せず各停だけにしたとすれば、話のつじつまは合います。
5時間の間は快速を運行する以上、快速の混雑と各停の閑散?のばらつきは残ります。
朝夕ラッシュ時と日中とでは快速列車内の混雑率は異なりますが、各停よりも快速に利用が傾く点では同じです。
ただ、ラッシュ時に比べて日中は、混雑度のばらつきの度合いは少ないということはできます。
その点についてJR東日本は触れていませんでした。
また、聞き手側からの質問があったかは不明です。
日中であっても、快速が残るならそれに越したことはないということでしょうか。
日中の快速と前記3点との整合性については、触れられていないようでした。
日中10時台から15時台の5時間だけ快速を残す施策
繰り返しになりますが、JR東日本が京葉線で改善したい3点とは、平日通勤時を前提にしたものであると念頭に入れれば理解しやすくなります。
ラッシュ時の快速の混雑の高さと各停の混雑の低さ、同時に上り通勤快速の混雑の低さと前後の各停の混雑の高さの是正が、京葉線ダイヤ改正の主眼ということが見えてくるからです。
その次の話として、土曜・休日については沿線に行楽地が多い状況下において、快速の集中を避けるため平日同様、午前10時までと夕方以降は各停のみとしたと考えられます。
それらにより、京葉線では10時台から15時台に快速を設定しても議論はないだろうという考え方で運行を継続したと思われます。
日中に快速を残すことで、沿線市への不満に落としどころを見い出す?
また、日中を含めた終日全列車の各停化を行なう場合、千葉市と中心とする東京-蘇我及び東京-海浜幕張の列車速達イメージを損なうことから、日中については前記3点を当てはめず、快速を設定することで、千葉市など沿線各市区町村に対し、速達にも努めている姿勢を見せたとも思われます。
千葉市を中心とする沿線市側としては、日中5時間だけの快速では意味がない、朝夕の通勤時をはじめとして終日に快速を設定せよという論点ですが、JR東日本側は混雑の平均化を主体に、各市への落としどころとして、ラッシュ時の快速は無理ですが、日中の5時間は快速を残してありますよという道を選んだと感じられます。
1965年から1971年まで、首都圏における通勤五方面作戦という通勤ラッシュ緩和、複々線化による輸送力増強策がありました。
具体的には東海道、中央、東北、総武、常磐の各路線の複々線化、快速線と緩行線を分けての輸送力強化ですが、当時は埼京線と京葉線については白紙でした。
東京から大船、三鷹、大宮、千葉、取手までの輸送力が増強されました。
埼京線は東北新幹線の東京開業を目指す中で誕生しましたが、複線の線路条件の中で快速、通勤快速が設定され、快速は区間快速化されたものの、通勤快速は継続しています。
そうした中で千葉市としては、東京-千葉のもう一つの足である京葉線について、全列車が各停の運行では、総武線に例えれば、東京から快速でなく、秋葉原からの緩行線で千葉へ行くようなイメージで、政令指定都市としての面目もないということもあるのかもしれません。
日中5時間であっても京葉線に快速を残したことは、ラッシュ時運行はないものの、快速は残っているというJR東日本のフォローとも感じられます。
ラッシュ時は快速を設定しないが、朝夕の間の時間帯、10時台から15時台の5時間には快速を設定している路線は、京葉線だけでなく京浜東北線、横浜線、南武線にも見られます。
蛇足ですが、筆者はこの運行を勝手に「5時間快速」と呼んでいます。
京浜東北線の快速は、田端-品川で山手線と並走するため、両方とも各停である必要はないだろうということで、日中5時間、田端-浜松町間で、一部の駅を通過します。
東海道線列車が停車する新橋や、乗降の多い有楽町を通過するのが特徴ですが、この2駅に停車すると通過駅は西日暮里、日暮里、鶯谷、御徒町の4駅だけになってしまうため、割り切って通過していると思われます。
横浜線の快速は、平日は10時台から15時台、休日は9時台から17時台までの設定です。
南武線の快速は平日、土曜・休日とも10時台から15時台までの設定ですが、平日に限り、通勤快速的な役割で17時台から19時台にも設定しているのが特徴です。
京葉線の快速を10時台から15時台までの間で残したのは、一挙に快速全廃では反発が大きすぎるための第一段階的な措置と考えますが、日中5時間であっても快速の存在があることで、JR東日本にとっては各停のみの運行よりも印象が良くなること、長距離速達の声に応えられる、沿線の苦情は和らげられるとの計算はあるかと思われます。
従って横浜線、南武線と同様、JR東日本は日中の5時間の枠を基本に当面、快速は残していくと思われます。
日中の快速設定による各停との混雑平準化は別枠
問題は、この5時間の時間帯では、快速があるために、混雑のばらつきの標準化、各停の乗車チャンス拡大、各停の所要時間短縮は成されないことです。
今回の場合、JR東日本は、京葉線における3点の改善とは、平日通勤通学時を主体としたものであるとの前置きが必要だったかと感じられますが、それではラッシュ時快速の復活に話が飛躍するため、あえて避けたと思われます。
なお、埼京線の通勤快速、中央線の通勤特快の設定にもそれぞれ特有のものがありますが、それはまた別の機会に触れさせていただきたいと思います。
(※記載にあたり、千葉日報、2023年12月22日付け、「京葉線ダイヤ改正は実施の考え JR千葉支社長『丁寧に説明したい』 通勤快速廃止などで批判受け」を参考にさせていただきました。)