JR西日本は名古屋-福井の2回乗換によるバス転移に危機管理意識を
2024年3月20日付け、Yahoo!ニュースで「北陸新幹線県内開業の一方で 名古屋行き高速バスが大人気!」の記事を拝見しました。
記事の中で、北陸新幹線敦賀開業後、福井と名古屋を結ぶ高速バスの需要が増し、満席となるバスが増えていることに触れた内容があります。
福井-大阪でも敦賀乗り換えの手間の声が高まっていますが、福井-名古屋は福井-大阪よりもさらに手間がかかることがあります。
名古屋-敦賀の「しらさぎ」の半数が米原止まりで、米原止まり列車に乗る場合、米原と敦賀の2回乗り換えになります。
敦賀側から見れば「しらさぎ」は1時間間隔ですが、半数は米原止まりで、名古屋行きはほぼ2時間間隔となっています。
そのため、時間帯によっては名古屋-米原で東海道新幹線「ひかり」に乗り、それに加えて敦賀でも「しらさぎ」から「つるぎ」へと計2回乗り換えを強いられます。
名古屋-福井の列車距離は175キロ、その間に名古屋-米原「ひかり」28分、米原-敦賀「しらさぎ」30分、敦賀-福井「つるぎ」17分の、それぞれ短い乗車時間で2回乗り換えは億劫さ、苦痛感を抱いても不思議ではありません。
681・683系余剰車を「しらさぎ」名古屋延長には活用しなかった
新幹線敦賀開業による「サンダーバード」「しらさぎ」の敦賀-金沢廃止により、681系・683系に余剰が生じました。
その余剰分活用策の一つとして、米原どまりの「しらさぎ」(以下、「米原しらさぎ」)を名古屋まで延長(以下、「名古屋しらさぎ」)することを期待しましたが、名古屋延長はまったく行なわれませんでした。
米原「しらさぎ」が現状のままなのはJR東海との調整が億劫だから?
「しらさぎ」は元々、名古屋-北陸の連絡列車でしたが、東京からの北陸速達として「ひかり」の米原停車と、米原止まりの「加越」(当時)を設定し、その後「加越」は米原止まりのまま「しらさぎ」に統合されました。
JR東海は「ひかり」のうちの毎時1往復を米原停車とし、JR西日本は米原「ひかり」停車時間に合わせて「しらさぎ」の時間帯を設定しました。
東京からは米原「ひかり」接続の「しらさぎ」により北陸アクセスが毎時確保されました。
一方、名古屋からの北陸アクセスは名古屋「しらさぎ」で直通するか、名古屋-米原の「ひかり」乗車で米原乗り換えのいずれかとなりました。
後者の場合、名古屋-福井の移動で米原と敦賀の2回乗り換えとなり、冒頭記事の福井-名古屋のバスの好調に一層つながっていったのではないかと考えられます。
名古屋-福井で鉄道にできることは、米原「しらさぎ」の名古屋延伸による乗り換え回数の減(2回から1回へ)であり、名古屋から敦賀へ毎時「しらさぎ」が設定されるダイヤでの誘発です。
米原「しらさぎ」の名古屋「しらさぎ」化にあたっては、米原-名古屋がJR東海区間のため、JR東海との調整が必要であり、一筋縄でいかないことは理解します。
しかしながら、683系等の余剰が生じているのに米原「しらさぎ」を名古屋「しらさぎ」に延長運転しようとしないJR西日本の姿勢では、バス移動に拍車がかかっても仕方がないとも感じます。
一方、JR東海も「ひかり」米原停車はあくまで東京対北陸の利便性、速達策であり、名古屋対北陸の連絡は名古屋「しらさぎ」が基本という認識により、JR西日本に協力する姿勢がほしいと思います。
米原でJR東海とJR西日本に分けた、JR会社分割による影響がここでも感じられます。
現在の米原「しらさぎ」の米原-敦賀の発着時刻をそのままとして、名古屋まで延長設定した場合のおおよその発着時刻を想定してみました。
以下、時刻の「:」は略させていただきます。
しらさぎ51号 名古屋発 639→ 米原着739→ 米原発747→ 敦賀着818
(以下、同)
しらさぎ53号 1048→1148→1156→1226
しらさぎ55号 1248→1348→1356→1427
しらさぎ57号 1448→1548→1556→1627
しらさぎ59号 1648→1748→1756→1826
しらさぎ61号 1848→1948→1956→2026
しらさぎ63号 2042→2142→2150→2220
しらさぎ52号 811→ 844→ 851→ 950
しらさぎ54号 1010→1044→1051→1150
しらさぎ56号 1210→1244→1251→1350
しらさぎ58号 1410→1444→1451→1550
しらさぎ60号 1710→1743→1751→1850
しらさぎ62号 1910→1943→1951→2050
しらさぎ64号 2201→2234→2241→2340
「しらさぎ53・55・57号」の名古屋発時刻が「ひだ7・11・13号」と重複することへの対処方法
前記「しらさぎ53号」の名古屋10:48発の時刻は「ひだ7号」の発車時刻と重複します。
「しらさぎ55号」名古屋12:48発の「ひだ11号」、「しらさぎ57号」名古屋14:48発の「ひだ13号」も同様です。
そのため、上記の名古屋発の「しらさぎ」時刻のまま対応するとすれば、以下の2つのいずれかの選択をすることになります。
①「ひだ7・11・13号」の名古屋発時刻を5分早める
②「しらさぎ53・55・57号」の名古屋発時刻を5分早める
①の場合、「ひだ」3列車について、名古屋を5分早発し、岐阜で5分間、停車時間を延ばすものです。
下り「ひだ」は岐阜でスイッチバック運転となり、岐阜の停車時間は1分から3分、平均2分となっています。
②は、名古屋「しらさぎ」化する上記3列車について、米原での停車時間を5分間延ばすものです。
現在の名古屋「しらさぎ」は米原で、JR東海とJR西日本との乗務員交替と引き継ぎ、スイッチバック運転のため平均8分停車しています。
米原「しらさぎ」のうち「しらさぎ53・55・57号」を名古屋「しらさぎ」化するにあたり、米原停車を通常の8分停車から15分停車にするものです。
「ひだ7・11・13号」の名古屋5分早発、岐阜で6分停車が順当と考える
上記①と②の比較において、②での米原15分停車ではあまりに長すぎます。
米原で15分停車してまで名古屋延長運転をしても意味がないと言われるのは必然です。
したがって①の、「ひだ7・11・13号」について名古屋発を5分早め、岐阜駅で5分早着した分、岐阜に6~7分停車とするのが妥当と考えます。
名古屋発車後、18分で岐阜に到着してから6分も停車するのでは苦情になることも当然、考えられます。
「ひだ」の名古屋発車時間をずらして岐阜停車時間を現状のままにするのが望ましいのですが、その場合、「ひだ」の列車時刻を白紙改正に近い作業が必要になってきます。
その手間を簡略化するため、岐阜の6分停車に理解を求めるものです。
なお、「ひだ」の岐阜停車の場合、高山線がJR東海の路線であり、会社境界の米原でのJR西日本との引き継ぎよりもダイヤ変更の課題は少ないと考えます。
名古屋-JR北陸は東海とJR西日本の連携協調が必須
かつては名古屋から富山まで直通していた「しらさぎ」が、北陸新幹線金沢開業によって名古屋-富山は金沢乗り換えとなりました。
名古屋対福井の場合は乗車時間、移動距離ともに短い上での米原と敦賀の2回乗り換えであり、対金沢・富山とは異なります。
JR東海は自ら名古屋「しらさぎ」の動きはしないと思われます。
毎時の名古屋「しらさぎ」にしたところで、新横浜側からの福井移動は米原、敦賀の2回乗り換えだから同じことという冷めた見方をしているかもしれません。
しかし名古屋-福井と新横浜-福井とは事情が異なります。
JR西日本は名古屋-福井の利用促進策として、米原「しらさぎ」の名古屋発着をJR東海に対して働きかけ、米原「しらさぎ」と「ひかり」では効果が発揮されない名古屋-福井の鉄道選択に危機意識を持って取り組む必要があるのではないでしょうか。