E653系が汎用性、交直両用、7両の輸送力を首都圏臨時列車で活かすのに適材
JR東日本は2022年7月に、利用者が少ない地方路線の収支を公表していますが、その中で赤字額がもっとも大きかったのは意外にも羽越線村上―鶴岡の52億5,500万円でした。
同区間の平均通過人員は697人です。
日本海縦貫線を担う羽越線だったのは、「いなほ」が一定の本数設定がある中、想定外でした。
2021年度の羽越線の区間別輸送密度では、酒田-羽後本荘680人、村上-鶴岡853人、新津-新発田1,180人、鶴岡-酒田1,344人、羽後本荘-秋田1,725人、新発田-村上3,643人の状況です。
「いなほ」は新潟-秋田に2往復、新潟-酒田に5往復、新潟起点7往復設定で、E653系7両編成(酒田発着1往復は4両編成)により運用しています。
「いなほ」のグリーン車はJR東日本としては貴重な2&1席、定員18人のゆったりした配置です。
E653系7両編成の定員は428人、4両編成は266人で、4両編成は信越線「しらゆき」中心の運用です。
また、羽越線では観光用の快速として新潟-酒田に「海里」を金・土曜と休日に運転しています。
2019年3月から定期「いなほ」は新潟駅で上越新幹線列車との同一ホームに発着し、乗り換えが楽になりました。
◆「いなほ」の今後の見通しは?
コロナ後の乗車回復状況の様子を見てからになりますが、前記輸送密度の数値を見る限りは、多客期は別として村上以北での1列車7両編成は輸送力過剰に思われます。
2023年夏の臨時列車として「いなほ」は2往復増発されますが、運転日は8月ピーク時の4日間が中心です。
夏の期間中の計14日間は「いなほ3・10号」4両編成の7両化、「いなほ3・10号」の酒田-秋田延長運転がありますが、運転日数としては他線と比べると少ない方です。
一方、首都圏では臨時列車用として、直流電車の汎用型E257系が他方面で活躍していますが、E257系が走行できない唯一の路線が常磐線です。
唯一の7両編成を国鉄時代の車体色にして常磐線臨時特急を中心に運用しています。
〇 7月15日(土)「小江戸川越の風」日立7:10→川越10;05、勝田15:35→日立18:26
〇 7月29日(土)「夏の大洗ひたちなか1号」八王子7:50→勝田10:16、「(同)2号」勝田16:07→八王子18:33
〇 7月30日(日)「(同)3号」蘇我8:15→勝田10:16、「(同)4号」勝田16:24→蘇我18:24
〇 8月5日(土)「(同)5号」大宮8:16→勝田10:08、「(同)6号」勝田16:52→大宮18:47
〇 8月6日(日)「(同)5号」大船8:15→勝田10:26、「(同)6号」勝田16:24→大船18:27
〇 8月19日(土)「夏のいばらきフラワー号」宇都宮9:03→石岡10:59、石岡18:04→宇都宮20:23
〇 9月2日(土)「フラっといわき巡り号」高尾9:52→いわき13:36、9月3日(日)
「(同)」いわき14:24→高尾18:04
こうして見ると土・日曜のみの運転ではありますが、1編成のみのため設定には限りがあり、「夏の大洗ひたちなか号」でもこれ以上運転できないジレンマのような印象も受けます。
E653系は過去に仙台-青森、上野-新潟、高萩-日光などにも設定されたこともありました。
東京-青森で東北線、常磐線、上越・羽越・奥羽線経由でも設定できるのがE653系の強みです。
交流電化区間の50/60Hz両対応が可能で、旧北陸線全区間に直通できるのも随一です。
◆「いなほ」編成の一部首都圏転属の効果
E653系は新潟車両センターに「いなほ」用として7両編成7本、「しらゆき」用として4両編成4本があります。
「いなほ」の利用状況からは全車普通車化による4両編成での組成、混雑時、混雑区間は4両2組の8両編成組成が適当と思われます。
また「しらゆき」はE257系でも対応できます。
「しらゆき」にE257系を充て、「いなほ」減車と併せてE653系7両編成の一部を勝田車両センターに転属させるのはどうでしょうか。
これにより常磐線を中心に運用に余裕ができて臨時列車増発に幅が広がるほか、首都圏だけでなく磐越西線等、JR東日本の広範囲の中で自由な区間設定ができます。
東京-青森を羽越・奥羽線から東北・常磐線回りでのJR東日本東北外周列車も設定可能になります。
首都圏臨時列車でE257系5両編成では輸送力が不足するが、9両編成では過剰な時は7両編成のE653系が便利な存在になります。
JR東日本には首都圏の波動輸送策、旅客誘導策としてE653系の他方面での運用、活躍を今後の検討課題としていただきたいと思います。
(※タビリスの記事を一部、参考にしました。)