房総だけでは終わらない?JR東日本の全車指定席、座席未指定券化
JR東日本から2023年10月27日付けで「房総方面の特急列車を全車指定席で運転します」とのニュースリリースがありました。
2024年春のダイヤ改正後の話とはいえ、このタイミングでの公表は予想外でした。
JR東日本は特急の全車指定席化に伴う座席未指定券方式を考案、導入しているのが特徴です。
今回は、JR東日本の特急の全車指定席化と座席未指定券化(以下、両者一体で「全車指定席化」)の今後について考えてみました。
毎回のことですが、何の根拠もない勝手な想定であることを予めご了承ください。
JR東日本の自由席特急料金取りこぼし抑止策?
今回の房総特急の全車指定席化は、JR東日本の特急思想によるもので、総武線「しおさい」、外房線「わかしお」、内房線「さざなみ」が対象です。
首都圏では常磐線、東海道線、中央線、高崎線「あかぎ」と「成田エクスプレス」ですでに全車指定席が実施されています。
今回の房総地区への導入により、ほぼ首都圏全路線での全車指定席化が完了します。
JR東日本の特急全車指定席化の考え方を雑駁に表現すると、以下のようになるかと思います。
特急は着席が基本、全車指定席が基本、乗車列車が決まらない場合は座席未指定券で乗車後に空席に座って、指定券の持ち主が来たら他の空席へ移動して、空席がなくなったら立席、座りたかったら事前に購入して、金額は同じだから、従来の指定席料金よりも安くしてあるから、ということです。
そして特急券は事前購入が原則だから、購入せずに乗ったら料金が高くなるリスクがある、だから乗車列車が決まっていなくても、直前に飛び乗ったとしても、特急券は事前購入、座席未指定券という制度があるから、という思想です。
JR東日本の全車指定席化の考え方の根底は
JR東日本の全車指定席化、座席未指定券制度は、自由席特急券未購入のまま降車していく特急料金取りこぼし抑止策でもあると思われます。
座席未指定券制度により、特急券未購入の場合に現在の自由席特急料金よりも高額とすることで、事前購入を進めていく考え方と思います。
営業的に表面には出さなくとも、指定券購入分は減収になるが、自由席分の増収があること、特急券未購入乗車も同様であること、全体として指定席と自由席との合算収入との差は相殺され、同額かそれ以上になるとの計算があると考えられます。
房総特急の次の全車指定席化の列車は
JR東日本は最終的に特急の全車指定席化を目指していると考えます。
今回の房総特急への導入は「成田エクスプレス」、常磐・中央・東海道・高崎の各線区の全車指定席化に次ぐ第6弾と感じられます。
2024年度の房総に続いて、高崎・吾妻線「草津・四万」、信越線「しらゆき」、篠ノ井線「信州」、羽越線「いなほ」、奥羽線「つがる」に導入するのではないかと予測します。
これにより、JR東日本の在来線特急の全車指定席化は完了します。
座席未指定券制度を導入しない列車はJR東海車両の「しなの」、東武と相互乗り入れの「日光」「きぬがわ」だけになるのではないかと想定します。
新幹線はどうでしょうか。
座席未指定券方式は導入していないものの、全車指定席化は進められています。
東北新幹線「はやぶさ」「はやて」、秋田新幹線「こまち」、山形新幹線「つばさ」、北陸新幹線「かがやき」で全車指定席化しています。
上越新幹線は臨時「とき」で採用しています。
今後、短距離乗車であろうと「やまびこ」「なすの」「とき」「たにがわ」「はくたか」「あさま」の全車指定席化による割り切りは確実かと思われます。
ただし、座席未指定券による空席利用はとくに東京側では混乱するため導入を見送り、東北・秋田新幹線は盛岡以北、山形新幹線は福島以北での特定特急券による空席利用を継続すると考えます。
例外として、隣駅の特定特急料金だけは全車指定席であっても据え置くと思われます。
JR西日本の特急全車指定席の考え方は
ここでJR西日本の特急を見てみます。
JR西日本でも特急の全車指定席化の傾向にあります。
紀勢線「くろしお」、山陰線・福知山線「きのさき」「はしだて」「まいづる」「こうのとり」、播但線「はまかぜ」は全車指定席化さえています。
今後、伯備線「やくも」、関西空港「はるか」、山陰線連絡「スーパーいなば」、山陰線「スーパーまつかぜ」「スーパーおき」、能登線「能登かがり火」が注目されます。
北陸新幹線接続の「サンダーバード」「しらさぎ」の自由席は継続と思われます。
JR西日本では、座席未指定券までは導入しませんでした。
満席時の立席特急券制度の継続、指定席券未購入での空席利用自体が望ましくないという認識、受け止め方があると思われます。
また、2両編成で利用が少なく、駅の無人化も進む中での自動券売機での指定券購入やネット予約までは飛躍があるとの思いも感じられます。