平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

西九州新幹線佐賀駅、佐賀空港、有明海の3ルートを比較する

西九州新幹線全通の一方法としての、佐賀県を経由しない有明海ルートを考えます

乗りものニュース、2024年7月8日付け、「このままでは乗り換えが永久固定・・・ 西九州新幹線を全通させるには “全く別ルート”の方がメリット大?」を拝読しました。
西九州新幹線新鳥栖-武雄温泉間でのフリーゲージトレインの中止以降、長崎県JR九州佐賀駅経由、地元費用負担を伴う佐賀県佐賀空港経由を主張して前に進まない中、佐賀県を通らない新たなルートを提案した内容です。

記事の一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

時間がかかっても、ルートを変更するのが望ましいと考えます。「佐賀県を通らないルート」ということです。

 仮に、諫早駅長崎県諫早市)で新幹線を分岐させ東へ真っすぐ延ばし、長崎本線小長井駅(同)付近から海底トンネルか橋梁で有明海を抜け、大牟田駅(福岡県大牟田市)付近に上陸すれば、通過するのは長崎県と福岡県だけで済みます。

(以上引用)

 

西九州新幹線九州新幹線新大牟田から分岐して有明海を経由し、諫早と結ぶこととすれば、新大牟田諫早では佐賀県を経由しない分、費用負担がなくなり、長崎県としても長崎-博多を短絡、速達できるという斬新な発想です。

 

西九州新幹線の未完成区間はどのルートになるか?

今回の提案を含めて整理すると、西九州新幹線の未完成区間のルートは、

① 長崎県JR九州が推奨する佐賀駅経由のルート

② 佐賀県が推奨する佐賀空港経由のルート

③ 今回の、有明海のルート

となります。

それぞれ一長一短があるわけですが、一般的に見れば①の佐賀駅ルートが自然と考えられます。

しかし佐賀県が認めないため前に進まない状況です。

佐賀県は②の佐賀空港経由を主張しますが、九州新幹線筑後船小屋駅から分岐して佐賀空港を経由後、佐賀空港から武雄温泉に北上して長崎へと向かうのは、長崎県だけでなく、一般的にみても明らかに迂回しすぎ、実際に新幹線が当ルートを行くと博多-長崎の所要時間は延びます。

佐賀県にとっての西九州新幹線は、佐賀空港と博多を結ぶことに意義があり、長崎から博多への速達は佐賀県には直接は関係ないという姿勢を感じます。

また、国に相談を持ちかけたことに対する認識の相違も、この問題解決をさらに遅らせる一因になったようです。

互いの主張の並行線で今回の③、佐賀県を経由しない、新大牟田諫早有明海海上経由で結ぶ提案がされたと認識します。

この案の場合、武雄温泉-諫早の西九州新幹線開通区間の扱いが課題になります。

その点について本文で触れていますので再度、引用させていただきます。

 

(以下引用)

 既存の武雄温泉~諫早間は利用の多い時間帯だけ運行し、博多~武雄温泉間は特急「みどり」などに接続することが考えられます。佐賀県が建設費225億円を負担していることや、嬉野温泉にほかの鉄道がないこと、新大村に車両基地があることを考慮するなら、当面は廃止ではなく短縮編成での最低限の運行維持が望ましいです。

(以上引用)

 

有明海ルートでの武雄温泉-諫早の新幹線扱いの困難さ

実際に新大牟田諫早有明海ルートの提案どおりに建設するとしても、武雄温泉-諫早については短縮編成での最低限の運行としても意義はほとんどなくなります。

「既存の武雄温泉~諫早間は利用の多い時間帯だけ運行」とありますが、朝夕ごく一部だけの運行では何のための武雄温泉-諫早の開業だったのか、議論が表面化します。

博多-長崎の移動を有明海経由にする結果、武雄温泉-諫早の新幹線残存の意義は佐賀-長崎の都市間輸送だけとなります。

博多-長崎を現行同様、武雄温泉で「みどりで」「かもめ」乗り継ぎでも移動できる2ルート構成になりますが、武雄温泉回りも案内しては有明海ルートの新幹線の意義自体に議論が出てきます。

 

佐賀-長崎としての新幹線を含めての移動需要はどの程度あるでしょうか。

佐賀から武雄温泉で新幹線に乗り継ぎ、武雄温泉-諫早の新幹線を活かすとしても、有明海ルートとは別に存続する武雄温泉-諫早に運行にどれほどの価値があるかは疑問で、同区間の新幹線列車は4両編成でも輸送力過剰になりそうです。

 

佐世保-長崎には一定の需要がありますが、大村線経由の快速「シーサイドライナー」が担っており、佐世保から武雄温泉まで特急「みどり」を利用し、新幹線に乗り換えて両方の特急料金や迂回分の運賃差額まで支払いながら長崎へ行くわけもありません。

 

結局のところ、武雄温泉-諫早の新幹線区間が開業している以上、今回の提案は遅きに失したと言わざるを得ません。

有明海ルートによって武雄温泉-諫早区間の意義を失わせることは、武雄温泉-嬉野温泉の建設費用を負担した佐賀県から、新鳥栖-武雄温泉とはまた別の新たな議論を呼んでしまいます。

 

西九州新幹線佐賀駅ルートか、佐賀空港ルートかの二者択一に帰結

新鳥栖-武雄温泉のルートが佐賀駅経由か、佐賀空港経由かの二者択一の中、このまま前に進まないので今回の提案が出てきたわけですが、現実的には無理と考えます。

話が進まない中、進む方向を前提に、どちらかのルートを選択するしかなさそうです。

新鳥栖-武雄温泉ルートの中で、一般的に納得するであろう佐賀駅ルートを佐賀県側が歩み寄るか、佐賀空港経由を長崎県JR九州側が歩み寄るか。

双方とも自己主張だけで終始せず、互いに相手側の主張も理解しつつ将来的、長期的な視野・視点でどちらのルートの方が後々のしこりを残さないか、後々の世代に喜ばれるのか。

その際、国も呼び込む方がよいのか。

 

また、佐賀駅の利用者は、大阪-佐賀の移動の際、新大阪-長崎の新幹線直通列車でなくとも、博多乗り換えのままで構わないか。

沿線の佐賀県民や佐賀駅周辺、佐賀空港周辺からはどのような声があるか。

佐賀空港の利用者は、博多と長崎へ向かう新幹線が必要なのか、または新幹線があった方が望ましいのか。

それぞれが冷静沈着になって前に進まれることを望みます。

 

(※ 筆記にあたり、乗りものニュース、2024年7月8日付け、「このままでは乗り換えが永久固定・・・ 西九州新幹線を全通させるには “全く別ルート”の方がメリット大?」を一部引用及び参考にさせていただきました。)

 

※ 写真は本文と無関係です。