首都圏普通列車グリーン車で、常磐線の利用が低く見受けられる理由を探ります
Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンライン)、2024年9月25日付け「JR中央線が「当面は無料」のグリーン車導入、本格開始で「新たな問題」の可能性も」を拝読しました。
記事の中で印象に残った部分を引用させていただきます。
(以下引用)
東海道・横須賀線以外では、総武快速線が1980年に横須賀線との直通運転開始に伴いグリーン車を導入した。2004年に宇都宮・高崎線と東海道・横須賀線を直通する湘南新宿ラインが大増発されると、サービスを統一するために宇都宮・高崎線にもグリーン車を導入。あわせて定期券でも利用できるようにするなど、グリーン車の「大衆化」を進めた。
グリーン車文化のない埼玉方面で受け入れられるのか注目されたが、すぐに定着し、宇都宮・高崎線で年40億円程度の増収をもたらした。
(以上引用)
上記引用部分の、「グリーン車文化のない埼玉方面で受け入れられるのか注目されたが、すぐに定着し」という部分で国鉄時代には、東海道方面以外には普通列車グリーン車(以下、「普通グリーン車」)はなじまないだろうというイメージがありました。
東海道線と横須賀線だけだった普通グリーン車は、横須賀線と総武快速線の接続により房総にも波及していきました。
その後、湘南新宿ラインにより東北線(宇都宮線)、高崎線にも普通グリーン車が拡大し、さらに上野東京ライン開通後は常磐線にも波及しました。
そして2025年3月からは中央快速にもグリーン車が誕生します。
日中の普通グリーン車席はどの路線にも比較的余裕がある中、気になるのは常磐線グリーン車にとくに空席が多く見受けられることです。
常磐線グリーン車の利用状況の数値データはありませんが、朝夕の通勤時を除く日中時間帯のグリーン車はとくに空いているように感じられます。
横浜方面と大宮方面を湘南新宿ラインと上野東京ラインで相互直通化した東海道・東北(宇都宮)・高崎線、また横須賀線と総武快速線との相互直通化に比べ、常磐線は上野東京ライン直通とはいえ品川までの乗り入れです。
常磐線電車の行き先表示器が「東海道線直通」となっているのは、沿線に横浜方面直通でない分、気遣いも感じる反面、背伸びをしている印象を受けます。
以下、常磐線普通列車グリーン車の日中利用が伸びていかない?理由を探ってみました。
1 路線別利用状況と、主要駅の乗車人員規模が他の路線より少ないこと
2023年度における路線別利用状況と、一日平均乗車人員を、いずれもごく一部ですが、みてみました。
以下、単位は「人」です。
(1)2023年度路線別利用状況
〇 常磐線 日暮里-取手:307,740
〇 東北(宇都宮)・高崎線 東京-大宮:553,296
〇 中央線 神田-高尾:584,641
(2)2023年度一日平均乗車人員
〇 東海道・横須賀線 横浜駅:362,348、戸塚駅:98,045
〇 東北(宇都宮)・高崎線 大宮駅:244,393、浦和駅:88,213
参考までに、常磐線で我孫子-土浦の2023年度の乗車人員を以下、「人」で示します。
我孫子駅:27,877、天王台駅:15,984、取手駅:23,262、藤代駅:5,276、龍ケ崎市駅:10,318、牛久駅:10,776、ひたち野うしく駅:6,301、荒川沖駅:7,062、土浦駅:14,138
※水戸駅は26,738人
2 大宮方面列車の横浜直通に対し、常磐線は品川止まりであること
中央快速線では、一部特急が新宿止まりで東京までは乗り入れないため、東京発着の快速に特急よりも分があります。
常磐線の場合、特急・普通列車とも品川発着のため、中央快速線のような、特急に対する普通列車グリーン車の優位性はありません。
東京・品川に直通していれば十分だろうという考え方です。
仮に普通列車が横浜、大船まで運転していれば結果は変わっていたかもしれませんが、常磐線だけが高価な交直両用電車での運用ゆえに、特急・普通列車とも品川までとせざるを得ない点もあるかと思います。
常磐線普通グリーン車は、東海道・横須賀線方面は料金が通算される点はありがたいことですが、直通でなく全列車品川乗り換えであっては、東海道とのグリーン車利用促進につながっていかないのでしょうか。
3 首都圏と主要駅間は特急の方が速いこと
常磐線には柏・土浦・石岡・友部・水戸に停車する特急「ときわ」が毎時1往復設定されており、通勤時間帯には増発もあります。
これらの駅での乗降であれば、乗車時間が短く、料金はほぼ同額、座席設備も同等、指定席である分着席率が高いなどの理由で、普通グリーン車よりも特急の方が選ばれると思われます。
4 普通列車旅行で土浦止まり列車ばかりではグリーン車利用をしなくなる
青春18きっぷ等での普通列車旅行の際、グリーン車での利用もよく見られるところです。
東京から熱海、高崎、宇都宮までのグリーン車乗車なら、一定の需要、利用者の満足感は得られると思われます。
常磐線の場合、水戸までの乗車なら同じ気持ちにもなりますが、土浦までとなると普通列車グリーン車に乗る気力は薄れてきます。
横須賀線の日中毎時1往復は久里浜発着のように、常磐線も毎時1往復は水戸方面直通というわけにはいかないでしょうか。
5 普通グリーン車に対する利用イメージが他の路線と異なること
かつて常磐線普通列車は宴会列車とも言われていたことがありました。
今でも上野発下り列車で、いくらかその面影は感じることがあります。
いささか語弊があるかもしれませんが、常磐線普通列車はグリーン車よりも普通車が似合う路線という感じがします。
日中、水戸方面までのグリーン車付き列車をすべて土浦止まりとしたのは、全体的な輸送力過剰のほか、グリーン車需要がなかった結果と受けとめざるを得ません。
以上の事由が重なって、常磐線普通グリーン車の日中利用の閑散さに表れているかと思いますが、あくまで想定です。
2階建ての展望が普通グリーン車の一つの持ち味ですが、これは常磐線だけのものではなく、特急「ときわ」の速達性と料金差の強みには及ばないようです。
今後、羽田空港アクセス線開通後は、品川止まりの常磐線普通列車を羽田空港側に持ってくるのか、あるいは東北・高崎線列車を東海道直通から羽田直通に切り替えて東海道直通列車が減る分、常磐線普通列車が東海道直通を担うのか、状況を見守りたいと思います。
(※ 筆記にあたり、Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンライン)、2024年9月25日付け「JR中央線が「当面は無料」のグリーン車導入、本格開始で「新たな問題」の可能性も」から一部を引用させていただきました。)