阿武隈急行は東北線福島から分岐して再び槻木で合流する路線で、1988年に全線開業しました。
この阿武隈急行が今後の路線の存続可否で揺れており、とくに国鉄時代の丸森線区間である、宮城県側の丸森-槻木が地域で議論になっています。
ここで、旅行総合研究所タビリス、2024年6月12日付け「阿武隈急行を残せるか。赤字5億円、地元で議論。年度内にも『在り方』示す」の記事から一部を引用させていただきます。
(以下引用)
収支面では、約5億1200万円という巨額の営業損失を計上しました。沿線自治体が欠損補助をしているため、最終赤字は約3500万円にとどまりました。ただし、沿線自治体の一つ、柴田町は欠損補助の支援金約2350万円の支払いを保留しています。
~中略~
沿線自治体では、「阿武隈急行線在り方検討会」を設け、同線の今後について議論しています。
~中略~
福島民友電子版6月1日付によりますと、5月31日に開かれた会合で、宮城県側は、阿武隈急行の代替方法として、気動車、BRT、バス、BRTとバスの併用の4案を提示。電化鉄道維持の場合と比較する考えを示したとのことです。
代替案を提示しているのは宮城県側のみで、福島県側は存続に前向きです。
~中略~
車両は経年30年以上の8100系が14両と、2018年度以降に導入した新型のAB900系が6両在籍しています。今後、車両更新を控えて、これまで通り電化設備を維持して電車を走らせるのか、維持するとしても非電化にしたり、所有数を減らすのかも含めた検討も必要になるでしょう。
(以上引用)
阿武隈急行に対する宮城県側の方向性と、それに対する福島県の動きは?
状況を整理すると、
〇 福島県側、福島-あぶくま間は鉄道存続の方向であること
〇 宮城県側、丸森-槻木は、鉄道存続とするか、しないかの議論中であること
今後の方向性は、以下の4項目からの選択です
→ 存続する場合でも気動車とし、電化設備を撤去
→ 鉄道を廃止の場合、全線BRT化か、全線バス化か、BRTとバスとの併用
阿武隈急行に交流電化設備は過剰だった?
全線開業の1988年当時は景気がよい時代でした。
その勢いで阿武隈急行も電化したかのような印象があります。
第三セクター路線での電化は野岩鉄道、会津鉄道の一部など、数少ないからです。
現在の列車本数は、福島発着が27往復、槻木発着が22往復です。
福島-槻木の全線乗車の場合、直通列車のほかに、途中の梁川または丸森での乗り換えを含めて15往復の設定です。
この運転本数状況で全線電化する必要性はあったでしょうか。
交流電車は1両での単行運転はできず、最小限2両編成です。
直流電車と違って、JRや大手私鉄からの車両購入もままならず、2両編成で新製するほかありません。
それも阿武隈急行に不利な要素です。
仙台直通が2往復のみで、槻木乗換が基本の宮城県側
宮城県側は槻木から仙台への直通は朝夕各1往復のみで、ほかは槻木で乗り換えが必要です。
福島側が直接福島に発着するのとは大きな差があります。
槻木での仙台方面との接続は20分前後待つ時間帯もありますが、全般的には良好とはいえます。
しかし、そもそも槻木で乗り換えることの億劫さ自体が不利な要素になっています。
宮城県側では、阿武隈急行の利用者増には仙台直通列車の増加が不可欠という議論はあるでしょうか。
県や沿線市町での利用促進等の盛り上がりがないまま、鉄道側の努力不足ばかりを批判しているような印象も受けます。
多大な支援金を出しているのだから当然ということでしょうか。
阿武隈急行に乗ろうという利用促進啓発や知恵の出し方は、鉄道側だけが行なうものでしょうか。
宮城県の柴田町が、阿武隈急行の欠損補助支援金約2350万円の支払いを保留しているのは鉄道側に痛手です。
鉄道側に増収、あるいは経費節減の努力、効果が感じられないということでしょうか。
具体的には鉄道利用者の増加や、イベント等での増収策か。
鉄道側の人件費、人員数、物件費、設備投資、諸経費等の削減か。
列車ダイヤの見直し、車両の見直し、編成短縮、電化設備の見直しなど、いずれでしょうか。
少なくとも阿武隈急行は自助努力の実績を伝え、今後の更なる努力策を提示する必要がありそうです。
それが支援金につながる評価に足るか、足らないかはその次の話です。
参考までに、柴田町の人口は36,972人(2022年12月末現在)の状況です。
なお、阿武隈急行沿線の他の市町の人口は、角田市26,671人、丸森町11,741人、伊達市56,307人(いずれも2024年5月末または6月1日現在)の状況です。
以下は、毎回のことですが、根拠のない勝手な想像によるものですので、予めご了承ください。
少なくとも電化設備は過剰ということでしょう。
鉄道存続、気動車化となると、宮城県だけでなく福島県側を含めた全線での実施となることが考えられます。
その場合の気動車は、新製か、新製でもハイブリッド車か、JR東日本などから、例えば気動車キハ100・110系などを買い取るか。
あるいは男鹿線の交流用一般形蓄電池駆動電車EV‐E801系のように、槻木、福島、梁川の3駅で、剛体架線での車両充電方式にするか、といったことになります。
いずれにしても電化設備は撤去となりそうです。
電化設備と電車運転を継続とするかどうかです。
上記同様、電化設備は過剰ということで、気動車化するように思われます。
気動車をどのように
8100系14両を廃止、AB9000系6両はJR東日本の気動車キハ100・110系などと交換協議などをするでしょうか。
(余談)福島-槻木が東北線、阿武隈急行とも54.9キロの偶然性と同距離企画
阿武隈急行全線が54.9キロであることは時刻表でぐ分かりますが、東北線福島-槻木の距離が54.9キロの同距離であることを知る人は少ないかもしれません。
これは、東京-蘇我の総武・外房線と、京葉線との全く同じ43.0キロに並ぶものです。
いずれも単なる偶然でしょうか。
運賃も現時点で東北線990円、阿武隈急行980円でほぼ同額です。
途中駅と所要時間は東北線11駅55分、阿武隈急行22駅70分です。
東北線は船岡の桜の車窓、阿武隈急行はやながわ(梁川)希望の森公園があることで有名です。
阿武隈急行と東北線が同距離であることで両社が協調連携する「福島-槻木59.4キロ、す『ごくよ』い、『福』が『槻(ツキ)』になる日帰り往復きっぷ」企画などはいかがでしょうか。
(※ 筆記にあたり、旅行総合研究所タビリス、2024年6月12日付け「阿武隈急行を残せるか。赤字5億円、地元で議論。年度内にも『在り方』示す」の記事を一部引用及び参考にさせていただきました。)
※ 写真は本文と無関係です。