青森から西鹿児島まで70の行き先表示で全盛期活躍を思い出す企画
現在の車両の行き先表示器はフルカラーLED式が主流となり、字幕式は過去のものになりました。
急行列車、普通列車によるサボの交換も同様です。
方向幕やサボの役割終了は、時代の変化として受け止めるしかなくなりました。
方向幕の持ち味
しかしながら字幕式の行き先表示器(以下、「方向幕」)にはLEDにはない、それなりの持ち味がありました。
列車の終着駅では、折り返しの新たな行き先となるコマになるまで、ホーム上でいろいろな行き先を見ることができます。
その究極が国鉄時代の12系客車でした。
青森から西鹿児島(現、鹿児島中央)まで計70コマ、様々な行き先の表示があり、行き先表示変更時の作動を見て旅情を感じ、それぞれの行き先駅の光景に想いをめぐらす演出力がありました。
当時の12系客車の方向幕は、西鹿児島の次が青森となっていて、その瞬間、九州の果てから本州の果てに飛ぶ箇所が最大の見どころでした。
また、回送表示に切り替える際は、多くの行き先を経由して最後に回送の文字位置に辿り着くまでの間の表示も楽しめました。
通過する列車を見る都度、方向幕で列車の愛称と行き先を視認し、それが旅情を誘います。
夜に眺める時の、車両ごとの方向幕の明かりの連続も同じです。
LED行き先表示器の長短
LED行き先表示器では終着駅で一瞬のうちに行き先が変わり、途中の行き先演出を見ることはできません。
起承転結で言えば「結」だけの合理的な装置です。
LED式は行き先の表示だけでなく路線名、号車、列車名、列車号数、次の停車駅、全部の停車駅、ローマ字表記等もできる秀逸なものです。
新たな行き先や列車名等に対しても、字幕式のような幕交換の手間を要さず、基地作業での合理化にも寄与しています。
車両基地で電車が休んでいる時、方向幕式ではパンタグラフを下げていても行き先表示が見えますが、LED方式はパンタを下げると単なる黒地だけになります。
一定速度以上になると自動的に消灯し、旅情演出もなくなりました。
余談ですが、京成「スカイライナー」のフルカラーLED行き先表示器が日暮里-空港第2ビルの36分間、最高時速160km/hでも消灯しないで表示しているのは興味深い現象です。
京成側の配慮でしょうか。
国鉄時代の70コマの行き先と表示順序
ここで国鉄時代の12系方向幕の行き先と、その表記順序を振り返ってみたいと思います。
以下、整理上、10コマ単位の表記としました。
なお、タイプその1、タイプその2の名称は、ここでの便宜的なものです。
【共通】
回送・試運転・団体(※または団体専用)・東京・品川・京都・大阪・岡山・広島・下関
門司・博多・熊本・長崎・佐世保・大分・宮崎・都城・西鹿児島・青森
秋田・新潟・直江津・富山・金沢・長野・松本・黒姫・妙高高原・上野
【タイプその1】(上野から続く)
赤羽・大宮・黒磯・白河・会津若松・福島・仙台・小牛田・石越・一ノ関
盛岡・尻内(※または八戸)・宮古・釜石・米沢・山形・新庄・酒田・横手・大館
弘前・越後湯沢・石打・長岡・関山・戸倉・上田・小諸・岡谷・新宿
沼津・静岡・名古屋・米原・鳥栖・糸魚川・福井・加賀温泉・(空白)・臨時
【タイプその2】(上野から続く)
新大阪・姫路・宇野・糸崎・徳山・小郡・三角・八代・人吉・別府
南延岡・福井・福知山・江原・豊岡・城崎・竹野・浜坂・鳥取・米子
出雲市・大社・浜田・天橋立・峰山・大阪↔篠山口・大阪↔福知山・天王寺・白浜・新宮
伊勢市・紀伊勝浦・鳥栖・門司港・篠山口・香住・名古屋・加賀温泉・(空白)・臨時
タイプその1とその2の違い
タイプその1は、東京から東海道・山陽線→九州→西鹿児島→青森→日本海縦貫線→信越線→上野→東北線→上越線→信越線→中央線→新宿→東海道線→北陸と九州の一部を追加して、臨時で終わります。
東北、信州などが多くなっています。
タイプその2は、回送で始まり上野までの30コマはタイプその1と同じですが、上野以降は山陽線→九州→山陰線→紀勢線→新宿→東海道線→北陸と九州の一部を追加し、臨時で終わります。
山陰、紀勢線、南九州などが多くなります。
方向幕による効果の実例として、えちごトキめき鉄道の455・413系3両編成の交直流電車はすでにその成果を上げているところであり、ファンには広く周知されています。
2024年5月4日付けの、同鉄道社長ブログ(鳥塚亮の地域を元気にするブログ)、「日本のどこかに 私が乗りたい 汽車がある」の中でも「下関」の字幕に引き寄せられたファンの光景が紹介されています。
下関の行き先表示は、この電車の方向幕のごく一部分です。
ファンが望む光景を先取りして実践する手腕は流石と思います。
ぐんま車両センター12系で方向幕70コマ化による見学撮影を企画しては?
国鉄時代の12系客車は北海道・四国以外の各地で見られ、455系以上に全国的な存在でした。
その12系客車で当時の70コマ行き先を再現し、それを見学撮影するのは鉄道ファンに喜んでもらえる企画と思います。
対象車両として、JR東日本のぐんま車両センター所属の12系が最適と思います。
青森から西鹿児島まで、全盛期の70コマの行き先表示を再度整備し、この作動を楽しむ車両センターでの見学撮影会のほか、団体列車運用での折り返し停車中に、方向幕70コマの見学会も盛り込むのはどうでしょうか。
また、秩父鉄道のSLパレオエクスプレス12系でも検討されてはいかがかと思います。
(※ 記載にあたり、各種YouTube、ブログ等を参考にさせていただきました。)
※ 写真は本文と無関係です。