「従前と同じダイヤに」「受け取った球をどう処理するのか」の投げかけ
習志野市がJR東日本千葉支社に対し、2024年7月29日に、京葉線新習志野駅の停車列車本数の復活を求める要望書を提出しました。
習志野市では、2024年3月ダイヤ改正で快速列車の各駅停車化により新習志野駅停車本数が増えたものの、JR東日本がその後の各自治体等からの快速復活要望を受け、同駅停車列車が再び減ることに対する不満を表明しています。
その根底にはJR東日本が習志野市に対し、事前の協議や相談がない一方的な通告という経過が感じ取れます。
快速復活を望む沿線自治体はどう受け止めたでしょうか。
この件については新聞各紙でもとり上げられていますが、ここで要望書を提出した際の習志野市側の話として、先に千葉日報、2024年7月30日付け、「京葉線、停車本数復活を 習志野市、JR千葉支社に要望」から記事の一部を引用させていただきます。
(以下引用)
「一度本数が増えたのに大幅に減少するのは利用者への配慮がない。公共交通機関は各自治体へ考え方を示し意見交換をしていく立場だが、説明も欠けていた。従前と同じダイヤにしてもらいたい」と訴えた。
(以上引用)
次に、日本経済新聞、2024年7月29日付け「習志野市、京葉線巡りJRに要望書 『ダイヤ見直しを』」から記事の一部を引用させていただきます。
(以下引用)
「市としての考えを示し、社長、支社長あてに要望した。受け取った球をどう処理するのか、JR側の早急な対応に期待したい」と話した。
(以上引用)
引用させていただいた部分の中で、「従前と同じダイヤにしてもらいたい」「受け取った球をどう処理するのか」という習志野市の言葉が印象的です。
「従前と同じダイヤ」とは、日中以外の快速を全廃して各駅停車化した、2024年3月16日の改正ダイヤを指します。
「従前と同じダイヤに」することと、海浜幕張や外房・内房線から東京への速達利便とを両立するには、現状の各駅停車ダイヤに加えて、快速を増発する方法しかありません。
しかし京葉線全体でそこまで増発するだけの需要があるかどうかは別です。
また、増発車両分の調整や、乗務員の調整も伴います。
習志野市や他の関係機関等の一部では単に、今のダイヤのままで快速を増発すれば解決すると理解しているかもしれません。
習志野市からの要望書は、新習志野駅停車列車復活のみに集中しており、他の自治体やJR東日本の京葉線に対する事情等は議論の対象外です。
新習志野駅と同じ状況下にある駅として二俣新町、市川塩浜、葛西臨海公園、潮見、越中島、幕張豊砂があり、新習志野駅と同じ不満を抱いているのかどうか不明ですが、少なくとも習志野市のような要望書の動きまでには至っていないようです。
このうち、市川塩浜~越中島間の駅については、京葉線快速復活があっても、武蔵野線東京行きの列車によるフォローがあるため、不満は弱まると思います。
そのため、新習志野と同じ境遇にあるのは二俣新町と幕張豊砂の2駅に特定されると思われます。
幕張豊砂の場合、千葉市では海浜幕張から東京への速達に論点が集中していることや、幕張豊砂駅が開業して間もないため、新習志野駅のような動きはないと思われます。
二俣新町に関係する市川市は、同駅の利用者数や駅周辺環境から、幕張豊砂同様、動きは見せないのではないかと想定されます。
京葉線各駅の一日の乗車人員(単位:人。東京と蘇我を除く。●は快速停車駅)
先般、JR東日本から一日の乗車人員データが公表されましたので、京葉線各駅の乗車人員をみてみます。(単位:人)
越中島 :5,221
潮見 :14,834
●新木場 :67,206
葛西臨海公園:13,646
●舞浜 :76,156
●新浦安 :50,380
市川塩浜 :7,720
二俣新町 :5,095
●南船橋 :21,678
新習志野 :11,655
幕張豊砂 :5,830
●海浜幕張 :55,196
●検見川浜 :14,469
●稲毛海岸 :19,590
●千葉みなと:16,602
なお、新習志野駅の乗車人員で、2019年度から2023年度までの5年間の推移としては、13,295人→9,106人→10,559人→11,330人→11,655人の経過となっています。
「従前と同じダイヤにしてもらいたい」「受け取った球をどう処理するのか」に対して
新習志野駅の2023年度の一日の乗車人員は、一万人を超えてはいるものの、京葉線全体でみれば高い数値とまでは言えないと思われます。
普通列車の本数減は、許容範囲とまでは言えなくとも絶対反対という強硬姿勢に至るほどの数値とも言えないと思います。
現に、新習志野駅より乗車人員の多い複数の快速通過駅で、習志野市の動きに続かないのは、わずか6か月で再び各駅停車を快速化することは、通過される駅にとっては好ましくはないが仕方がないという受け止めではないでしょうか。
習志野市の場合、乗車人員の数値など別次元であり、それよりもわずか半年間だけの各駅停車列車の本数増の実施で、元に戻されたこと、事前に何の相談もなく、市側の意向が全く伝えられなかったことの憤りが感じられます。
「受け取った球をどう処理するのか」という言葉を背後に、要望書を受けたJR東日本としては、以下のような回答の方向性になろうかと想定します。
〇 2024年9月予定の快速設定に対し、京葉線全体の輸送需要から、現行ダイヤのままで快速を増発する形にはできないこと。
〇 すなわち、各駅停車列車の一部を快速に変更する形となること。
〇 また、車両数と乗務員数についても、そこまでの確保ができないこと。
新習志野-東京の利用者の便宜としては、以下のことが考えられること。
〇 各駅停車列車については、新浦安での快速接続により、新習志野-東京の速達を考慮すること。
〇 南船橋止まりの武蔵野線列車を海浜幕張まで延長することにより、新習志野から武蔵野線列車に乗車して南船橋で乗り換え後、後続の快速東京行きに乗り継ぐダイヤを考慮すること。
JR東日本が今後、新習志野駅の利便性向上として具体的に打ち出せるものとすれば、上記2点ではないかと考えます。
JR東日本としては「従前と同じダイヤにしてもらいたい」ことについては困難であること、また「受け取った球をどう処理するのか」に対しては、上記2点で努力していきたいということで、習志野に対しては、納得は得られなくても理解はしていただきたい、という方向性になるでしょうか。
習志野市側が納得も理解もできないと門前払いしようとも、JR東日本としては房総地区を含め京葉線全体を鑑みての総合判断というしかないと考えます。
房総路線を含めた京葉線という全体像と、新習志野駅という個別像との位置
習志野市としては、各駅停車列車の本数減自体が変わらなのでは話にならないという姿勢で平行線かと思われますが、以前の千葉県知事の談話で「ダイヤ改正はそもそもすべての人たちが満足するものでは基本的にはない。我々は個々の駅の利用者という観点ではなく、県全体のまちづくりや幕張新都心の拠点性への影響、そういう広い次元で我々が総合的に判断して春のダイヤ改正を容認できないと声を上げてきた。それ以上でもそれ以下でもない」ということに対しては、習志野市はどのように受け止めているのでしょうか。
新習志野駅の利便だけを考える立場ということでこの先もずっと貫けるのでしょうか。
京葉線全体の速達、房総地区や海浜幕張からの首都圏への速達は習志野市とは関係ないということで我が道を貫いて単独で進むことや、京葉線・房総地区という全体像の中で、新習志野駅という個別、固有の部分像だけを拡大して進む習志野市は、はたして考え方や方向性としていかがなものだろうかと感じました。
(※ 筆記にあたり、千葉日報、2024年7月30日付け、「京葉線、停車本数復活を 習志野市、JR千葉支社に要望」、及び日本経済新聞、同7月29日付け「習志野市、京葉線巡りJRに要望書 『ダイヤ見直しを』」から記事の一部を引用及び参考にさせていただきました。)