簡単に導入できる「うれしート」の強みを活かして新快速指定席を促進する提案です
JR西日本から、2024年8月22日付けで「有料座席サービス拡大のお知らせ ~「快速 うれしート」の線区を拡大し、「Aシート」を臨時設定します!~」のニュースリリースがありました。
また、乗りものニュース、2024年8月25日付け「新快速「有料座席」の運行区間が“中途半端”なワケ 「青春18きっぷ」では使いにくい? JR西日本に聞いた」を拝読しました。
乗りものニュースの内容は、東海道・山陽線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線)の新快速、快速のAシート連結列車の事情に触れた興味深いものです。
乗りものニュースの記事の一部を引用させていただきます。
(以下引用)
京阪神を結ぶJR西日本の「新快速」には、2019年から有料座席サービス「Aシート」が導入されています。ただ、「Aシート」が導入されている列車は6往復と少なく、運行区間も網干・姫路~野洲間にとどまっており、JR東海との境界駅である米原駅などへは乗り入れません。一見すると「中途半端」な運行区間になっているのはなぜでしょうか。
~中略~
JR西日本は、Aシート車が野洲駅までの運転となっている理由について「設定する時間帯の調整や、車内整備作業に要する時間、列車遅延時の対応という3点を鑑み、野洲駅までの運転としています」(近畿統括本部)と話します。
Aシート車は現時点では少数で、車両運用が制限されるほか、全車両が自由席の新快速・快速列車と混在する形になるため、ダイヤが乱れた時の対応が難しく、常に遠方まで直通させるわけにはいかないようです。
~中略~
「Aシート」は現状、あくまで通勤時間帯を中心とした関西圏の有料着席ニーズに応えるためのサービスというわけです。
(以上引用)
東海道・山陽線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線)の京阪神を中心とする新快速、快速列車を見てみると、東側は米原、敦賀まで、西側は播州赤穂までの長距離運用となっており、12両編成15分間隔で相当な本数、車両数になります。
その状況の中で、付属編成側の中間先頭車の9号車をAシートにした編成が1日6往復、野洲・草津~姫路・網干間で設定されています。
京阪「プレミアムカー」、阪急「PRiVACE」と異なるJR西日本「Aシート」事情
大阪~京都の有料座席車は、京阪の「プレミアムカー」、阪急の「PRiVACE」、JR西日本の「Aシート」で、3社が着席サービスを図っています。
「プレミアムカー」「PRiVACE」の2&1席やデラックス感を見ると「Aシート」が勝るのは高速運転、運転区間の広さ、トイレ設備等があります。
しかしAシート列車は1日6往復のため知名度や利用の拡大には限りがあります。
京阪と阪急はJR西日本に比べ走行距離が短いため、有料座席車連結は比較的し環境ですが、JR西日本の新快速は長距離区間であり、また運転本数や編成数が多いため、すべての新快速にAシート車を連結するには相当の年月を要します。
乗りものニュースの記事のとおり、Aシート車特有の諸事情が絡み、姫路~野洲の区間専用で、Aシート車連結での終日運用はできず、Aシート車連結本数増加の難しさを感じさせます。
2024年10・11月の混雑が見込まれる日に姫路~野洲でAシート車連結の1往復が設定されますが、運転日は2か月間で計8日間にとどまります。
JR東日本の首都圏全普通列車のグリーン車連結のような方向性を、そもそもJR西日本はAシートで目指していないのかもしれません。
Aシートの新快速が米原まで行かないもう一つの別事情
JR西日本はAシートを9号車に選定しましたが、これは12両編成の中間位置であることと、トイレ付き先頭車であるため、Aシートの利用者サービスとして、またAシート用の乗務員室として適当であったためと考えられます。
しかし、Aシートが付属編成位置の9号車ため、湖西線近江今津~敦賀と、北陸線米原~近江塩津の区間にもAシート付き4両が乗り入れることは、運用の効率面や両区間の利用状況もあって、避ける必要がありました。
そのことも、Aシートの新快速が野洲・草津止まりの列車になっている事情の一つと思われます。
暖簾だけで実施できる「うれしート」を新快速に導入してはどうか?
JR西日本では2024年10月7日から、網干・姫路→大阪の片道に計4本の「うれしート」列車を新たに導入します。
「うれしート」はAシート車とは異なり、暖簾で区切っただけの指定席車ですが、関西線(JR大和路線)、おおさか東線などでは着席保証の安心感から好調のようです。
京阪神でのAシート車増強に相当の年月を要するならば、いささか極論ではありますが発想を変えて、網干・姫路~米原・近江今津の区間で、新快速列車の最後部車両を「うれしート」として導入するのはどうでしょうか。
暖簾だけですぐに導入できるのが「うれしート」の強みであり、新快速の指定席は一挙に推進できます。
「うれしート」は常に編成の車端、最後部車両の乗務員室側の位置になります。
12両編成の場合、各駅のホーム中央の位置からは遠ざかりますが、今回の網干・姫路→大阪の「うれしート」4本はそれで割り切っているはずです。
網干・姫路~米原・近江今津の区間での「うれしート」化により、前側付属4両編成での近江今津→敦賀、米原→近江塩津では「うれしート」はなくなりますが、普通車の利用状況から見てこの2区間では不要と思われます。
また、敦賀→近江今津と、近江塩津→米原でも「うれしート」扱いは除外し、近江今津または米原に到着後の前側に基本編成の8両増結、12両編成化により、付属編成側最後部車両を「うれしート」にするものです。
12号車の「うれしート」はトイレのある9号車まで距離はありますが、車掌側から直近位置座席の「うれしート」の性格上、やむを得ないと考えます。
なお、新快速の「うれしート」は、半車ではなく1両全体の方がよいと考えます。
「うれしート」「Aシート」なら、「うれシート」が自然
最後にAシートの余談です。
冒頭のJR西日本ニュースリリースで、「通勤・通学やおでかけ、また大きな荷物をお持ちの場面など、さまざまな場面で「座って・ゆったり」ご利用いただける「快速 うれしート」「Aシート」をぜひご利用ください。 」という説明文があります。
「Aシート」と「うれしート」を並列で列記していますが、「Aシート」は自然ですが「うれしート」の文字校正には無理があります。
鐵道コムや鉄道ファンのブログの一部でも、「うれシート」と誤記の事例は時折見られます。
「Aシート」「うれシート」にした方が、「Aシート」との兼ね合いとしてもなじみやすく、「うれしート」よりも自然ではないでしょうか。
(※ 筆記にあたり、乗りものニュース、2024年8月25日付け「新快速「有料座席」の運行区間が“中途半端”なワケ 「青春18きっぷ」では使いにくい? JR西日本に聞いた」を一部引用及び参考にさせていただきました。)