今後、電化区間の架線の撤去または架線は残るが普通列車は気動車化の可能性がありそうな路線・区間を考えてみました
JR東日本東北本部から、2024年10月18日付けで「奥羽本線 新庄~院内駅間 復旧状況と運転の見通しについて」のニュースリリースがありました。
ニュース記事の一部を引用させていただきます。
(以下引用)
2025 年ゴールデンウィーク前の運転再開を予定しています。
運転再開時には、サステナブルで災害を受けてもより早期復旧が可能となる鉄道として、電気式気動車(GV-E400 系)を導入し、電車線(架線)設備を順次取り外します。
(以上引用)
このニュースはかなり話題が広がっていて、運転再開は喜ばしいものの、電化設備を撤去して気動車化される点に注目が集まっています。
今回の奥羽線新庄-院内の区間については特急列車、貨物列車は走っておらず、山形-秋田の都市間輸送を担うだけの需要も見込めないことから、電化設備については撤去としたようです。
電化設備撤去はこの区間だけで終わるとは思えません。
災害復旧とは無関係に、他の路線区間にも波及することは十分考えられます。
実際に長崎線肥前浜-長崎、磐越西線会津若松-喜多方では架線撤去が実施されています。
その路線・区間はどこでしょうか。
JR東日本路線は2019年度から2023年度まで5年間、同じくJR西日本は2022年度と2023年度の2年間、利用状況(平均通過人員)の数値を見ながら想定してみました。
以下、毎回のことですが、何の根拠もない勝手な想像ですので予めご了承ください。
電化設備撤去の可能性がある路線と区間
〇 奥羽線院内-大曲
今回は新庄-院内に特定した電化設備撤去ですが、それだけでは終わらないように思えます。
特急列車、貨物列車はなく、山形-秋田のビジネス・観光需要としても新庄-大曲の電化維持は難しそうです。
新庄から秋田県に入った最初の駅、院内までですが、今後は湯沢、横手、大曲へと徐々に拡大していき、最終的に新庄-大曲が架線撤去の可能性がありそうです。
新庄-湯沢の2019年度から2023年度まで5年間の利用状況(平均通過人員)の推移は、年度順に、(2019年度)416人→(2020年度)212人→(2021年度)229人→(2022年度)262人→(2023年度)291人となっています。
新庄-院内の直通列車は8往復です。
以下、同様に2019年度から2023年度まで5年間の利用状況ですが、湯沢-大曲は、1,704→1,191→1,256→1,448→1,578となっています。
湯沢-大曲でも将来、気動車での2両編成が基本の可能性はありそうです。
〇 中央線辰野-塩尻
最近、EF64牽引の客車列車企画もありましたが、機関車引退用の特別なものでした。
辰野-塩尻の5年間利用推移は、547→362→360→433→490、本数は1日9往復で、架線撤去による1両単行の気動車化は十分考えられます。
〇 越後線柏崎-吉田
1日8.5往復、719→618→637→639→629です。
〇 弥彦線弥彦-吉田
1日10往復(土曜・休日12往復)、521→395→388→442→473です。
柏崎-新潟で長岡経由に支障をきたした場合、越後線経由があるという名目もあったようですが、越後線での幹線代替え輸送までは無理でした。
余談ですが、新潟-吉田-東三条は別として、国鉄最後の電化区間が函館・室蘭線函館-東室蘭だったらなぁと、東室蘭-札幌の架線下を走るDF200形ディーゼル機関車牽引の貨物列車を見ると、路線の長短は別として、ふと思い浮かべてしまいます。
信濃大町以北でも特急設定がありますが、利用人員が信濃大町-白馬でも762→511→550→666→770の状況です。
白馬-南小谷は、215→126→136→188→189の数値です。
南小谷まで定期「あずさ」、白馬まで臨時「しなの」も走りますが、新宿と名古屋から白馬への直通需要はどうでしょうか。
長野原草津口から先、万座・鹿沢口、大前までの利用が、320→236→255→263→260の数値です。
特急「草津・四万」の万座・鹿沢口までの運転時代はもう戻らないのでしょうか。
〇 紀勢線白浜-新宮
特急「くろしお」が多く走るイメージですが、2022年度793人→2023年度935人は厳しい数値です。
新宮発着の定期「くろしお」は5往復、白浜-新宮の普通列車は7往復(区間運転を除く)です。
「くろしお」の気動車化逆戻りはないでしょうか。
2022年度371人、2023年度894人の状況です。
本数は小野田発着9往復、長門本山発着3往復の状況です。
雀田-長門本山を筆頭に、電化設備は撤去されても仕方ないと思われます。
交直流電化切り替え区間ゆえに、常磐線E531系を充当していますが、輸送力5両は過剰です。
列車によっては宇都宮-黒磯のE131系より長い編成両数は、黒磯で奇妙にも映ります。
E531系の3両編成化はJR東日本ではと行なわないと思われ、2~3両編成で気動車化されるのではないかと思われます。
この区間のE531系は交流区間だけの走行で、交直流E531系5両編成は輸送力過剰であり、非効率です。
仙台の交流電車で短編成の701系、E721系をいわきに延ばした方が輸送需要に見合っています。
〇 肥薩おれんじ鉄道八代-川内
交流・直流電化設備がありますが、鹿児島への貨物列車用のための設備です。
九州新幹線と並行する在来線は、博多-八代と川内-鹿児島中央は第三セクター化はされず、JR九州の管轄です。
八代-川内だけはJR九州は引き受けませんでした。
運営する肥薩おれんじ鉄道は、JR九州から2両編成の交流電車購入には至らず、単行運転可能な気動車を選択しました。
肥薩おれんじ鉄道が、貨物列車のための電化設備を維持する余裕がなくなったときは非電化になるのでしょうか。
その場合、新製されたばかりのJR貨物のEF510形交直流機関車は余剰にならないでしょうか。
貨物列車用の電化設備継続に近いものとなっています。
前社長は、非電化の可能性にも触れたことがありました。
JR西日本から交直流521系購入とまではいかず、単行運転可能な気動車となりました。
交直流電車では停車が不可能であろう、デッドセクション地点にえちご押上ひすい海岸駅を新設したり、電化設備を活かして413・455系交直流電車を走らせるなど、ユニークな施策です。
貨物列車と特急「いなほ」は電化を活かしていますが、普通列車は交直流電車でなく気動車となっています。
短編成が組めない交直流電車投入は不要ということでしょうか。
701系、E721系の交直流版があったらなどと思い浮かべるのは高望みでしょうか。
こうしてみると、線路を残す代わりに電化は終える、線路は残るのだからという時代になっていくのでしょうか。
各路線の沿線人口減少はともあれ、コロナ禍終了後の列車利用回復を期待したいところです。
(※ 筆記にあたり、JR東日本東北本部、2024年10月18日付けニュースリリース「奥羽本線 新庄~院内駅間 復旧状況と運転の見通しについて」、JR東日本「2019~2023年度路線別ご利用状況」、JR西日本「2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)について」を参考にさせていただきました。)
※ 写真は本文と無関係です。