東京から150キロ程度以上離れた、景色のよい独断偏見10路線です
昨日の「東京近郊で景色のよい鉄道路線を聞かれたら 独断偏見ベストテン」の続編で、今回は東京起点に150キロから300キロ程度までの、やや離れた地域の路線が対象です。
過去の記事との一部重複は昨日と同様ですが、ご了承ください。
1 奥羽線福島-米沢
福島から2駅目、庭坂から列車は右側に進み、急勾配を登る架線柱の連続性が胸をうならせます。
また、赤湯から先も右手に進んで急勾配を登ります。
逆に上り列車では、赤湯と庭坂に着く手前、盆地の広大さを車窓から味わうことができます。
今後、山形新幹線の庭坂-米沢のトンネル新線による高速化のため、同区間では板谷峠の光景がトンネル一色に変わる可能性が高くなりました。
今のうちに福島盆地の展望と、急勾配線路を知らせてくれる架線柱演出による車窓を存分に楽しみたい区間です。
松本→長野方向の下り列車からの、姨捨での善光寺平の急な車窓展開の演出、展望の雄大さは何度通過しても感動します。
頂上にある姨捨駅から地平の稲荷山駅へ急勾配を降りていく列車と合わせて、姨捨駅でのスイッチバック体験の価値から、特急「しなの」よりも姨捨停車の普通列車乗車をお薦めします。
柿崎-米山-笠島-青海川-鯨波の5駅、15.0キロは線路と駅、いずれも海に近く、とくに青海川駅が有名です。
五能線鯵ヶ沢-八森81.1キロほどの長区間の日本海車窓ではないにしても、幹線でこれほど長く日本海と並走する路線として貴重です。
4 只見線
青春18きっぷの定番として人気のある路線です。
長期間の災害不通を乗り越え、全線開業が再開されたのは喜ばしいことです。
本数は限られますが、数多くの鉄橋が見どころで、会津若松-小出135.2キロ全線に乗ってほしい路線です。
会津桧原-会津西方の間にある第一只見川橋梁がとくに有名ですが、ここは高台からの写真撮影の被写体として名高いところであり、列車乗車時は高台での写真撮影ほどの鉄橋の迫力や周囲に溶け込む列車光景の感動とは異なります。
只見線列車乗車時は、第一只見川橋梁を渡る前後区間において、列車内での写真光景を掲示物等で見せてもらってからゆっくり鉄橋を渡ると感動が深まるようにも思います。
只見線列車撮影で、車で沿線を訪れ、列車乗車とは無縁のケースも多く見られますが、せめて地域への店舗や給油等であっても寄り道してほしいところです。
5 吾妻線
終点が万座・鹿沢口なら自然でしたが1駅先、利用客の少ない大前で終わっているのが不可思議ですが、長野原草津口から嬬恋(袋倉、万座・鹿沢口、大前の3駅が嬬恋に含まれる)を経由して、現在のしなの鉄道豊野駅まで建設が計画されたものの、1971年に大前まで完成した後は着工されませんでした。
当時、長大トンネルによる浅間山との関連での危険性の指摘等があったとされますが、大前で終わっている姿がいろいろなことを考えさせます。
2014年に八ッ場ダム建設により岩倉-長野原草津口が新線に変わりましたが、旧線との分岐部分なども見どころです。
旧線には八ッ場ダムにより廃止となった線路を活用した「吾妻峡レールバイク アガッタン」があります。
岩島駅の約2.5キロ先、雁ヶ沢駅から吾妻峡八ッ場駅まで、全長7.2メートルの日本一短いトンネルだった樽沢トンネルを含めて、足漕ぎ式のトロッコが全長2.4キロ区間で設定され、懐かしさが蘇ります。
6 小海線
信州の高原鉄道と言えば以前から、中央線小淵沢と信越線(現:しなの鉄道)小諸駅を結ぶ小海線が思い浮かびます。
中央線小淵沢を出た小海線の列車は、甲斐駒ヶ岳を背景にして、中央線と逆方向へ180度、東京側へ戻るかのように北東へ進みます。
小淵沢-甲斐小泉の大カーブは、小海線が元々、茅野、上諏訪方向の富士見駅を基点として計画されていた産物とも言われます。
標高は小淵沢駅が886.7メートル、清里駅1,275メートル、野辺山駅1,345.67メートルで、JR駅では野辺山駅がもっとも高い位置にあります。
線路としての最高地点は、清里―野辺山の間の1,375メートルとなっています。
7 飯田線
東海道線豊橋から中央線辰野まで195.7キロに94駅、駅間平均2.1キロで、秘境駅の多い路線として知られます。
全線直通運転列車の一例として、中央線上諏訪9時22分発電車は豊橋16時16分着で、6時間54分の乗車時間です。
ただしそこで、東京-博多-鹿児島中央の東海道・山陽・九州新幹線の所要時間並みだなどとは思い浮かべない方がよいでしょう。
城西 - 向市場間には、「渡らずの橋」として飯田線の見どころの一つとなっている「第6水窪川橋梁」があります。
対岸へと一旦、川を渡りながら、再び対岸から戻ってしまう線路配置は、運転室背後の展望で体感したいところです。
2024年春は5月18日(土)・25日(土)・26 日(日)の 計3日間の運転で、豊橋9時50分発→飯田15時30分着、途中13駅停車です。
逆コースは、飯田発13時05分発→豊橋17時54分着、途中10駅停車です。
このダイヤのため、同じ日に「飯田線秘境駅号」で豊橋→飯田→豊橋による往復乗車はできません。
両方乗りたい場合は、豊橋から為栗駅14時14分発の発車直前まで体感して、しばし為栗駅に佇み、14時38分発で豊橋に戻ることはできます。
全車指定席で、自由席はないため事前の指定席確保が要件です。
8 上越線越後湯沢→水上
ループ線体験っ自体が貴重ですが、2つのループ線体験ができる全国唯一の区間です。
この区間の輸送実績が少ないため今後、降雪対策の必要がない下り線を使っての単線運転にならないかと心配になるところです。
そうなる前に松川ループ、湯檜曽ループの2つのループ線を存分に味わっておきたいものです。
かつて、紀行作家の宮脇俊三氏は、単線化して上り線(越後湯沢→水上)を使ったらどうかと書かれていました。
この意見どおりになればよいのですが、土合駅の486段階段がある下り線の方がよいという人も中には居るのでしょうか。
9 羽越線村上→鶴岡
下り線だけが日本海の車窓が得られて、上り線はトンネルに入ってしまい、面白みがない区間があるところです。
上越線越後湯沢→水上の上り線同様、降雪、風害の影響を少なくするため、将来的にトンネル主体の上り線だけ残すことも想定されます。
10 東北線豊原-白坂
最後に、東北線豊原-白坂です。
なぜこの区間かと疑問を持たれても当然ですが、鉄道写真好きな人なら「ああ、豊原-白坂の間の黒川橋梁ね」と見抜くかと思います。
黒川橋梁は栃木県と福島県の県境で、豊原-白坂の中間地点で黒川を渡る鉄橋です。
上り線と下り線とで橋梁の形状が異なります。
下り線の橋梁の足場はコンクリートのみで造られています。
上り線は線路の下に箱型のトラスがあって、その下にコンクリート足場があります。
上下線とも、車窓の位置にはトラスがないので、遠方まで広々と見渡せる開放感があり、爽快な気分になります。
下り線の右側窓から、上り線の橋梁の線路下トラスを見る方が、構造的な面白みが加わります。
黒川橋梁を渡った下り列車は上り線と離れて左手に迂回しながらトンネルに入り、再び上り線に向かっていく線路配置です。
上り線は白坂からトンネルはなく直線で一挙に橋梁に向かいます。
トンネルのある迂回線と直線状の線路との対比も、東北線全体の車窓の楽しみの一つです。
(※ 記載にあたり、各路線のWikipedia、「吾妻峡レールバイク アガッタン」ホームページ等を参考にさせていただきました。 )
※写真は本文と無関係です。