平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

阿武隈急行 利用促進策と今後のあり方を考える

在り方検討会での「単なる経費節減、増収策だけでは対応しきれない」「抜本的な経営改善策を講じる必要がある」とは?

福島-梁川-槻木を結ぶ阿武隈急行の今後のあり方について2年後を目途に方向性を出す趣旨で、「阿武隈急行線有り方検討会」が3月29日に始まったとのニュースがありました。

検討会の中で「単なる経費節減、増収策だけではなかなか対応しきれない状況にあるということで、抜本的な経営改善策を講じる必要がある」との言葉があり、存廃次元にまで至っている阿武隈急行の危機的状況を感じざるを得ません。

鉄道か、バス高速輸送システムBRTか、一般道路でのバスかの究極の選択が迫られている状況と受け止めました。

検討会には福島交通福島県宮城県、沿線5市町などが参加しています。

今後の議論の中でどのような方向になっていくでしょうか。

その前にいささか失礼な表現ではありますが、関係者の方々は阿武隈急行にどれほど乗っているかが知りたいものです。

もしも日頃、車移動の状況としたら、阿武隈急行存廃論議はどこまで奥深くできるのでしょうか。

 

阿武隈急行の利用促進策

冒頭の言葉の後では小手先の利用促進策など意気消沈してしまいますが、それは別として、現況で何ができるかをまず考えます。

福島-仙台は東北線普通列車で約1時間20分、1,342円です。

阿武隈急行経由は最速1時間11分、1,398円(福島-槻木980円、槻木-仙台418円)です。

実質的に運賃、所要時間とも互角ですが、阿武隈急行は梁川と槻木の2回乗り換えのため、東北線白石乗り換えの方が有利です。

 

しかし運賃面では、阿武隈急行の企画切符には興味深いものがあります。

毎月第一日曜日の「阿武急の日フリー乗車券」600円、毎月9の日の「あぶ急トクだね切符」900円、65歳以上で2月と3月の「シニア割ワンコインきっぷ」500円、夏休み期間の「中高生なつ割ワンコインきっぷ」500円などがあります。

福島-仙台の日帰りで、500円のフリー乗車券で往復すると、東北線の槻木-仙台往復836円を加えても1,386円であり、東北線片道運賃よりも安価です。

期日は特定されますが、福島-仙台往復1,386円の安さはもっとPRしてよいと思います。

月に一回の特定日だけでは限度があるため、土曜・休日の通年対象で、全線フリー切符が望まれるところです。

 

阿武隈急行のホームページで、観光用に「あぶ急沿線あるきガイドマップ」があります。

JR東日本が首都圏で行なっている「駅からハイキング」の、阿武隈急行2時間コース版のイメージです。

梁川駅からの「やながわ希望の森公園」のミニSL等の周遊、丸森駅あぶくま駅での阿武隈川巡り、東船岡駅での一目千本桜、船岡城址公園見学など、よく練られた内容と思います。

全駅それぞれの、駅周辺の案内図や説明ガイドもこの中に盛り込んでほしいものです。

下車したくなる駅の雰囲気づくり、演出が望まれます。

 

他には、以下のような利用促進策が考えられます。

〇 仙台直通列車の増強。

困難ならば次善の策として、常磐線列車と接続する岩沼、仙台空港鉄道列車と接続する名取までの乗り入れ。

〇 槻木での東北線仙台行きとの10分以内の接続

〇 福島での東北線郡山行きとの接続時間の考慮

〇 福島-仙台、福島-槻木で、往路は阿武隈急行、帰路は東北線の乗り分け切符の企画

〇 白石川堤一目千本桜の開花時期に、JR東日本とともに、列車往復による桜観光のPR。

阿武隈急行は、東船岡駅から歩きながら訪ねる魅力を伝える。

〇 梁川駅から車両基地まで列車で案内し、基地を見学する企画

〇 各駅で10分以内の停車時間で駅周辺を周遊し、全駅を体感する企画

 

◆鉄道存続時の「抜本的な経営改善策」私案

上下分離は鉄道を選択後の手法の話であり、それ以前の「そもそも鉄道でないと駄目なのか」の状況です。

厳しい経営状況の中で、阿武隈急行存続を選択した際の、一刻の猶予もない徹底した生き残り合理化策を考えてみます。

電化設備や電車の経費が経営圧迫の大きな要因とするならば、電化設備を撤去して非電化とすることもやむを得ないと思います。

羽越線村上-酒田、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインのような、電化区間でも気動車を充てる状況や、電化設備を撤去した長崎線肥前浜-長崎の考え方と同じです。

大都市で使い終えた電車を充てる直流電車の芸当が、交流電化の阿武隈急行ではできず、床下機器の多さから1両単独で走行できないのも交流電化の弱みです。

東北線の中古の交流電車購入や、車両機器の簡素化、小型車両での新製選択の余地はないものでしょうか。

ないならば非電化による、JR東日本キハ100系、110系を購入して電車と置き換えるか、最新の一般形気動車GV‐E400形と同形新製が考えられます。

気動車は1両で運行できるのが強みです。

 

◆在り方検討会での気になる発言

阿武隈急行線在り方検討会での発言がやはり気になります。

再掲になりますが「単なる経費節減、増収策だけではなかなか対応しきれない状況にあるということで、抜本的な経営改善策を講じる必要がある」という部分です。

単なる経費節減、増収策だけで対応しきれない状況ということは、存亡の危機にあるということであり、鉄道に抜本的なメスを入れるしかない、一刻の猶予もないと理解します。

筆者の小手先の拙案など、まさに「単なる経費節減、増収策」です。

「今後沿線市町の人口増も期待できない」との発言もありましたが、これは阿武隈急行に限ったことでなく、各地でも同じ事情を抱えています。

仙台周辺と阿武隈急行を同次元で比較することはできません。

 

阿武隈急行只見線と異なり、福島県だけでなく宮城県にまたがります。

歴史として、槻木側から国鉄丸森線で丸森側から福島へ延長された経緯があります。

気になるのは、阿武隈急行に対する福島県宮城県の温度差です。

宮城県からは阿武隈急行への思い入れが伝わってこないのが気になります。

福島県側は対福島、宮城県側は対仙台指向で、県境の利用はネックの状況もあります。

だからこそ福島県側と宮城県側の、全線がつながってこその路線価値、阿武隈急行の意義という視点も持ってほしいものです。

何をしても焼け石に水、意欲減退の空気感を「単なる経費節減、増収策だけでは」の部分で感じてしまいますが、たとえ小手先の利用促進であっても、努力ができる限りは努力してみることも必要ではないでしょうか。

 

※写真は本文と無関係です。