下降式で半分程度開けられると安心ですが
2021年10月31日20時頃発生した京王線刺傷事件について、2023年7月31日に東京地裁立川支部から判決の言い渡しがありました。
この事件で、電車内の窓が上半分ほど開けられたので、乗客が空いた窓の空間からホームに脱出できましたが、窓が固定式又はわずかな開閉空間で車外に脱出不可能だったらと思うと一層の恐怖を感じます。
この事件と、その2か月前、2021年8月6日の小田急での類似事件を受け、列車内の防犯カメラの設置が進んでいますが、今回は電車の窓開閉を中心に見てみたいと思います。
京浜東北線209系固定窓での停電による体調不良者の増加
窓の開閉で思い出すのは2005年3月23日、固定窓の209系が京浜東北線大森-蒲田間で高圧回路機器故障により長時間立ち往生した際、多数の乗客が体調不良になった事故でした。
停電で長時間停車の際、車端部3人掛けの小窓位置しか窓があかず、7人掛けの大窓が固定式でした。
209系の固定窓は、停電による車内換気不可までは想定していませんでした。
そのため、209系は固定窓の一部を開閉式にしました。
京王線刺傷事件の電車は窓の上部が開く構造だった
京王線刺傷事件では、特急電車が緊急停車の際、ホームドアと電車ドアの位置がずれたため、乗務員はドアを開けない判断をしましたが、乗客の多くは窓から脱出し、ホームドアを乗り越えて避難しました。
窓が上半分ほど開けられたので、約50㎝程度かと思わる上部空間から電車の外に出ることができました。
電車の窓空間はここからの非常脱出を想定したものではありませんが、固定式の窓、ごくわずかの窓空間よりも、外に出られる窓空間面積の方が安心さを感じます。
首都圏JR東日本の電車の窓はどの程度開くか
この事件以降、普通列車の窓は開けらないのか、開けられるのか、開けられるならどの程度の面積かを気にするようになりました。
JR東日本の首都圏E231系、E233系、E235系、E531系はいずれも7人席の窓が約半分開けられるので、非常時は脱出可能であり、安心感があります。
グリーン車の窓は固定式で開けることはできません。
常磐線は、快速E231系、中距離E531系普通車、緩行線E233系、いずれも7人掛け席の大窓は半分開けられます。
7人掛けの窓構造は、中央部で均等に2分化したものではなく、全体の3分の2を開閉窓にして、残3分の1は固定窓にしています。
この考えは関東の大手私鉄にも波及していきました。
常磐緩行線に乗り入れてくる千代田線所属16000系は、2分化した窓は均等の大きさです。
窓の開く面積はごくわずかで、非常脱出はできません。
小田急4000系は、ベースがJR東日本E233系のため、7人掛け席の大窓は半分開けられます。
新京成では主力8800形は、かつては全部の窓が半分ほど開けられました。
現在は半分の窓を固定化し、開けられる窓は半減しましたが、半分の面積が開けられる点で安心感があります。
8900形の大窓はすべて半分開けられます。
京成仕様のN800形、80000形はJR東日本方式で、中央の8人掛け席は大窓が半分開けられます。
京成では、車端の窓を大型の固定式に変えられたため、開けられなくなりました。
窓開閉はネットでも情報が入りにくい
列車の窓は全部開けられるのか、一部の窓か、固定式か。
窓は下降式か、中折れ式か、下段から上昇させる方式か。
開けられるならどの程度開くのか。
非常時、脱出もできるか。
中折れ式では、開閉面積が大きくても車外脱出はできません。
一見、窓が開閉できるように見えても、固定化あるいは狭小化されているケースもあるため、実態は列車に乗ってみないと不明の部分が多くあります。
列車の窓の状況まではネットでもなかなか情報が入りませんでした。
実際の列車内で冷房中に窓の開閉面積をやたらに上下して調べていると、列車内の防犯カメラが気になってきます。
窓開閉の確認行為で不審者扱いされるのも困りものです。
他社の窓開閉状況をごく一部ですが見てみます。
窓の開閉有無はわかっても、開く面積までは正確な情報がわからないことがあり、半端な内容ですがご容赦ください。
JR東海の標準形式となる315系は、上部3分の1ほどが座席側に傾く中折式で、窓からの脱出はできません。
JR北海道の最新電車737系は上部数センチだけが開き、実質的に全部固定窓に近い構造です。
JR西日本の223系等は、開閉可能な窓は下降式ですが、2000・2500番台以降は内折れ式で車外脱出はできません。
また、転換クロスシート1列単位の窓のため、横幅の面積が狭く、京王線のような横幅面積はありません。
そのため、上下部分の開口面積は大きくとも、横幅面積が小さいため、体を横にしての車外脱出は難しそうです。
体を一直線にしての脱出は、地上側ホームに救助する複数の人がいない限りは無理と感じます。
縦側方向の開口面積だけでなく、横幅も重要な車外脱出要素でした。
縦横に大きな開口面積のある列車の安心感を感じつつも、窓からの脱出がないように願いながら日々、通勤電車に向かいます。