米原-敦賀「しらさぎ」28分でもグリーン車需要は見込めるか?
2023年9月7日付け、拙「北陸新幹線敦賀開業後 名古屋『しらさぎ』と米原止まり列車との状況を比較する」の続編です。
現在の「しらさぎ」の車両は681系または683系で、編成内容は1号車がグリーン車、2号車から4号車が普通車指定席、5号車と6号車が普通車自由席となっています。
北陸新幹線敦賀開業後の「しらさぎ」で気になることの一つに、米原止まりの「しらさぎ」(以下、「米原しらさぎ」)のグリーン車の乗車率があります。
現在の米原「しらさぎ」は金沢まで約2時間、福井まで約1時間で運行しているため、走行区間や乗車時間の長さからグリーン車の一定需要は見込めます。
それが新幹線敦賀開業後の米原「しらさぎ」は米原-敦賀のみの運行に変わり、最速28分の乗車時間になります。
果たしてどの程度グリーン車の利用が見込めるでしょうか。
28分しか乗らないなら、グリーン車でなく普通車という選択に変わっていかないでしょうか。
「しらさぎ」の列車定員
「しらさぎ」の基本は6両編成で、多客期は9両編成になることもあります。
各号車の基本的な定員は以下のとおりです。
1号車(グリーン車指定席):36人、2号車(普通車指定席):68人、3号車(同前):72人、4号車(同前):46人、5号車(普通車自由席):68人、6号車(同前):64人
以上で1編成合計354人です。
なお、多客期増結の7~9号車は、
7号車(普通車指定席):56人、8号車(同前):72人、9号車(同前):56人
7~9号車3両の合計は184人、1~9号車の9両編成としては総計538人となります。
(以上、「JR編成表、配置表」より)
「しらさぎ」の6両基本編成の定員354人のうちのグリーン車定員は36人(2&1席が12列)で、1編成におけるグリーン車の座席比率は10%となっています。
グリーン車は通常、一般的には長時間乗車を中心として楽に、優雅に、快適にする座席の提供、静かで落ち着いた車内環境の提供が趣旨と思われます。
また、普通車が満席で、どうしても着席したい時にもグリーン車を選択することがあります。
その意味では、米原「しらさぎ」は米原-敦賀28分の短時間乗車で、グリーン車36人の需要は見込めるでしょうか。
乗車時間的には普通車に移行していくケースもあるように感じます。
東京-米原を「ひかり」グリーン車で2時間14分乗車してきた人は、米原-敦賀28分であってもグリーン車に乗り継ぎ、敦賀から「つるぎ」「かがやき」等もグリーン車で福井方面へ乗り継いで行くでしょうか。
それとも米原-敦賀は、今後の敦賀-福井も含め、両列車とも乗車時間が短いので普通車に選択が変化していくでしょうか。
北陸新幹線の場合は、少なくとも「つるぎ」として富山までの運行はあるので、グリーン車の需要は見込めますが、米原「しらさぎ」の場合は同区間に限定されるため、従来同様の利用は見込めないように思います。
そうなると半室グリーン車にしてはどうかということになってきます。
ただし、米原「しらさぎ」と共通運用の、名古屋-敦賀約1時間40分の「しらさぎ」(以下、「名古屋しらさぎ」)を考慮する必要があります。
名古屋「しらさぎ」の利用状況
2021年12月28日~2022年1月5日まで9日間の統計では、「しらさぎ」における米原-敦賀乗車は全国第13位、6.3万人、同じく名古屋-大垣は第31位、2.1万人でした。
(※「タビリス」2022年1月9日記事、「『コロナ前』の水準遠く。JR特急利用者数ランキング2022年新春版」より)
この数値割合で見ると、名古屋-米原の相互間だけの「しらさぎ」利用はないと特定した場合、米原からの乗車が4.2万人、米原-敦賀が合計6.3万人と読むこともできそうです。
割合としては名古屋からの乗車が33%、米原からの乗車が67%、米原から先が100%とも読めそうです。
名古屋-敦賀は最速でも1時間36分を要するため、時間的にはグリーン車需要が見込める長さです。
ただし名古屋「しらさぎ」の列車自体の利用としては、半数以上が2時間間隔ということから名古屋需要の多さをあまり感じさせないダイヤとなっています。
東京から敦賀方面への列車選択は「のぞみ」と名古屋「しらさぎ」よりも、「ひかり」と米原「しらさぎ」、名古屋「しらさぎ」の方が多いのでしょうか。
米原での方向転換、座席転換も意外に名古屋乗り換えを億劫に感じさせる間接要因かもしれません。
かといって「ひだ」の名古屋-岐阜のような後ろ向き座席も、名古屋-米原は1時間と長いため、できません。
むしろ米原-敦賀の28分の方が逆向きには適当ですが、米原「しらさぎ」は前向き配置であり、これもできません。
名古屋「しらさぎ」ならば名古屋-敦賀全体を通して、名古屋や岐阜からの乗車が多いか、グリーン車にも一定の利用実績があるかにもよると思われますが、グリーン車としての利用データは見当たりませんでした。
JR西日本の289系(683系の改造車)または287系で運用している特急を見ると、山陰線京都発着の「きのさき」「はしだて」、福知山線新大阪発着の「こうのとり」、阪和線・紀勢線の京都・新大阪発着「くろしお」は、いずれも289系または287系で運用されており、グリーン車と普通車がそれぞれ半室構造になっています。
「しらさぎ」「サンダーバード」のような1両全室グリーン車の定員36人に対し、半室グリーン車の定員は15人(2&1席が5列)、同号車の半室普通車は20人(2&2席5列)または24人(2&2席6列)です。
米原「しらさぎ」は1号車の半室、名古屋「しらさぎ」と1号車の全室が望ましいかと思われますが、共通運用なのでできません。
それができるとすれば米原「しらさぎ」と名古屋「しらさぎ」運用を分離して、名古屋「しらさぎ」は「サンダーバード」基本編成との共通運用にすることです。
それにより名古屋「しらさぎ」は「サンダーバード」と共通で基本編成6両、グリーン車は1号車の全室になります。
米原「しらさぎ」は単独運用でグリーン車は1号車の半室となります。
しかし米原「しらさぎ」だけの単独運用は、いかにも非効率です。
したがって、米原「しらさぎ」の半室グリーン車を名古屋「しらさぎ」にも拡大するか、現状のまま米原「しらさぎ」の全室グリーン車で継続かになります。
グリーン車を半室にしたために名古屋「しらさぎ」のグリーン車席が確保しづらくなるか、米原「しらさぎ」と合わせた上でのグリーン車平均利用状況を見るかということになります。
状況を見る限りは、将来的に前者の方が得策のように思われますがどうでしょうか。
蛇足ですが、周辺のJR他社に倣って、半室グリーン車としながらも定員確保のためグリーン車の2&2席化逆戻りだけは、JR西日本にはしてほしくないことを付け加えさせていただきたいと思います。
(※今回の筆記にあたり、「JR編成表、配置表」及び「タビリス」2022年1月9日記事「『コロナ前』の水準遠く。JR特急利用者数ランキング2022年新春版」を参考にさせていただきました。)
※写真は本文と無関係です。