平行普通列車

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「西九州新幹線『佐賀県を通らないルート』実現可能か?」を拝読しての感想

有明海の海底トンネル建設、諫早-武雄温泉は2時間に1本運転ならば、「リレーかもめ」のスーパー特急化で長崎-博多直行の方がよいのでは?

Merkmal(メルクマール)、2025年4月12日付け「西九州新幹線佐賀県を通らないルート』実現可能か? 有明海ルートで博多~長崎10分短縮…浮上した奇策の経済効果と課題とは」を拝読しました。

佐賀県の陸地を通らず、諫早大牟田有明海トンネルにより結び、博多-長崎を短絡、速達する新たな提案ルートの内容です。

記事の一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

 長崎新幹線有明海ルートは、西九州新幹線諫早駅から分岐し、諫早市東部から有明海を海底トンネルで越え、大牟田市付近で九州新幹線に接続する案である。

~中略~

 まず最大の利点は、佐賀県の陸地を通らない点だ。このため、佐賀県内に並行在来線の問題が生じない。そもそも現在の武雄温泉~新鳥栖間にしても、佐世保行きの特急が走っている以上、経営分離されるかどうかは怪しい。

 仮に有明海ルートが開業しても、西九州新幹線が存続すれば、佐賀駅へのアクセスのためにリレーかもめは残る可能性が高い。本数は減るかもしれないが、在来線そのものは維持されるだろう。

~中略~

諫早駅からの分岐は、駅の北側1km付近で分かれる。西九州新幹線の運行本数は、おそらく2時間に1本程度に加え、大村車両基地への回送列車くらいだろう。

~中略~

 長崎新幹線有明海ルートが完成すれば、博多~長崎のメインルートはそちらに移る。そうなると、既存の西九州新幹線諫早~武雄温泉間はどう扱うかという問題が出てくる。

 筆者は、本数は減るかもしれないが、これを残すべきだと考えている。新大村駅近くには車両基地があり、回送や通勤利用を目的とした便の運行もできる。また、長崎~佐賀間の利用者にも必要だろう。西九州新幹線の名前のままで運営し、長崎新幹線と区別するのがよい。特に、鉄道空白地帯だった嬉野温泉には不可欠な路線だ。

 ただし、武雄温泉での乗り換えがあるため、レールを追加して在来線特急が乗り入れるようにするという要望が出るかもしれない。それが実現すれば、中速鉄道としても活用可能だ。

(以上引用)


佐賀県の新幹線建設費負担、博多-佐賀間利用時の新幹線不要、新幹線の佐賀空港経由ルート等、種々の課題から新鳥栖-武雄温泉間の新幹線建設が進まないことから、博多-諫早・長崎の新たな速達ルートを提案した興味深い内容です。

今回は、この案を考えながら、自分の意見を書きたいと思います。

 

西九州新幹線諫早-武雄温泉を2時間に1本程度で残す価値をどう考えるか?

この案の課題として、有明海のトンネル部分約19.4kmを含む、長里駅大牟田駅間約28.3kmの長大トンネルの議論もありますが、その前に西九州新幹線諫早-武雄温泉間の扱いについて、「2時間に1本程度の運行」であっても「これを残すべきだと考えている」という点があります。

現在開業している長崎-武雄温泉69.6kmのうち、諫早-武雄温泉は44.7kmで、営業区間の64%を占めます。

仮に有明海ルートが開通すると、諫早-武雄温泉は長崎-博多速達という実質的な新幹線の役目を果たさなくなります。

多大な経費を投資して何のために造ったのかという議論になってきます。

 

長崎-博多は長崎新幹線有明海ルートがあるからということで、諫早-武雄温泉に2時間に1本程度の新幹線列車だけ残しても、もはや新幹線の意義はほとんどなくなります。

 

「武雄温泉での乗り換えがあるため、(中略)中速鉄道としても活用可能」ということについては、長崎-佐賀間に、武雄温泉経由の在来線特急が中速のスーパー特急方式で同区間を直通運転も可能な意見と理解しました。

その一方、佐賀県においては佐賀-博多間について、在来線特急で十分という見解があります。

 

整理すると、長崎-佐賀は、西九州新幹線武雄温泉経由で、長崎-武雄温泉間はスーパー特急化による直通。

佐賀-博多は在来線特急のまま。

そうすると、この二者を合体し、長崎-武雄温泉-佐賀-博多のコースでの一本化した特急像が浮かび上がってきます。

 

西九州新幹線長崎-武雄温泉間は、佐賀へのスーパー特急用に、狭軌の軌道を加えて3線軌条化しても、有明海ルートにより、西九州新幹線諫早-武雄温泉の投資は実質的に無駄になります。

有明海の海底トンネルは、総距離としては佐賀県経由よりも短くなりますが、建設費用や工期の長さはまた別の話です。

大牟田経由の利便性は海底トンネルによる副産物的な話で、佐賀県の利便性解決が先決です。

多大な経費で現在の長崎-武雄温泉間を造った以上、諫早-武雄温泉区間をローカル新幹線的な扱いで運営を続けていくのは課題が残ります。

このままでは長崎-博多が直通しないからといって、有明海ルートを新たに建設し、諫早-武雄温泉を細々と残しておく二重の西九州新幹線長崎新幹線投資は非効率と考えます。

 

長崎-武雄温泉のスーパー特急化による長崎-佐賀-博多直通特急はどうか?

長崎-武雄温泉の新幹線を造った以上は、武雄温泉-新鳥栖で西九州新幹線を造るしかなく、それでは費用負担やルート問題等で前に進まないならば、以下の方法を提案します。

〇 長崎-武雄温泉を標準軌から狭軌に変更し、スーパー特急化する。

〇 標準軌の現N700S新幹線車両は、武雄温泉接続の博多速達がなくなる以上、輸送力過大のため九州新幹線へ転属とする。

〇 長崎-武雄温泉は標準軌狭軌の3線方式でなく、狭軌に変更する。

〇 現在の「リレーかもめ」をスーパー特急化し、長崎-武雄温泉はスーパー特急として高速運転し、武雄温泉-博多は現在の「リレーかもめ」同様の速度として、長崎-武雄温泉-佐賀-博多を直通する。

 

以上により、長崎-博多が直通できます。

長崎-武雄温泉の新幹線設備が活用できます。

武雄温泉での乗り換えがなくなります。

佐賀-博多の在来線特急で十分という佐賀県の考えが満たせます。

佐賀・長崎の両県における佐賀-長崎直通も満たせます。

佐賀県の費用負担議論もなくなってきます。

長崎-武雄温泉の改軌、新幹線車両転属等の手間、費用については、有明海海底トンネルの工期・経費と比べれば比較にならない次元です。

新幹線速度とスーパー特急との速度差、所要時間差はありますが、乗り換えの手間がなくなる利点があります。

 

記事の中で、「佐賀県区間長崎県が負担する形にする方法が考えられる。しかし、有明海ルート全線の建設費は、フリーゲージトレインを前提に計画されたものであり、国の責任で負担すべきではないだろうか」とあります。

有明海の海底トンネル建設と、諫早-武雄温泉のローカル的な新幹線ダイヤ化よりは、長崎-武雄温泉のスーパー特急化による長崎-武雄温泉-佐賀-博多の直通のほうが所要時間の延びはあっても長崎-博多直通速達の早期化と費用の面では良いのではと考えますが、いかがでしょうか。

 

(※ 筆記にあたり、Merkmal(メルクマール)、2025年4月12日付け「西九州新幹線佐賀県を通らないルート』実現可能か? 有明海ルートで博多~長崎10分短縮…浮上した奇策の経済効果と課題とは」から一部を引用及び参考にさせていただきました。)

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※ 写真は本文と無関係です。